「恋心koigokoro」のセカンドステージ、第一話です。
鳴海と克哉の二人が、お互いの想いを受け止めたその後からのスタートになってます。
<大まかなあらすじ>
中学の時に出会った鳴海と克哉
お互いに恋しあいながらも、想いがすれ違っていた
年末に鳴海が所属するバンド「Cosmic Earth 」がライブハウスで前座として演奏をすることとなる。そのとき、鳴海は克哉への想いを作詞作曲した歌を歌うこととなる。
そして、二人はお互いの想いを確認し、長かったすれ違いの恋が次へのステップと進んでいく
前作読んでいただけると嬉しいです
# Prologue
#1 #2 #3 #4 #最終話
恋に落ちた瞬間 気づかされる想いR18
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急激な寒波に見まわれて、ここ数年ぶりの大雪となったせいでしばらく外に出るのも億劫になっていた。今は、その寒波も過ぎ去り、明るい日差しが雲の切れ間から見え隠れしている。
今日は、二十四節気の雨水と(うすい)いう節気にあたるらしい。天から降り注いでくるものが雪から雨に変わると言われているんだとか。つまり、春の訪れを垣間見ることができるようになるってことだろうか。
そうはいっても、現実には、よくも降ったもんだと思うぐらいの雪が、歩道脇に積み上げられている。この有り様のどこに春の訪れを感じることができるんだっつーの。思わずひとり愚痴りたくなくる。
俺は、克哉に呼び出されて約束の場所へ向かいながら、ぐちゃぐちゃと溶け出している雪の感触を子供のように興じながら歩いた。
待ち合わせの場所は、最寄の駅だった。
駅の周辺は、路線バスの停留所にもなっているので、かなりの人がいてにぎわっている。この駅のシンボルとされる時計塔の下が、待ち合わせの場所としてよく使われている。
約束の時間までまだ5分ある。
ふと目線を下にずらすと、ファーのついたジャケットを羽織り、スリムのブラックジーンズにワーカーブーツを見事に着こなした克哉がすでに待っていた。
かっこよすぎる……。
思わず口から洩れそうになるのを抑えた。
俺は、短めのPコート風のジャケットに中からフードつきのパーカ、そして迷彩柄のイージーパンツにスニーカー姿。急に自分の格好が幼く感じて恥ずかしくなった。
鳴海はヘッドホンをして雑誌を見ていた。まだ、俺が近くに来ていることに気づいていない。
俺は、完全に声をかけるタイミングを失って、その場に立ち尽くしていた。克哉を取りまくそこだけが、ゆったりしたスロー時間(とき)を作り出していた。
フッと克哉は雑誌から視線を外し左腕を見た。そしてゆっくりと目線が上がった。目の前にいる俺を見つけるとヘッドホンを外し、左手を軽く上げて優しい表情で俺に笑顔を向けた。
ほんの数秒の出来事だか、まるで映画のワンシーンのコマ送りを見ているよう な不思議な感覚に陥った。
「わりー。待たせた…」
ついぶっきらぼうな言い方しかできない自分をダメだなぁと思う。思いながらも、なかなか変えることができない。
「ん?時間通りだよ。走ってきたの?」
「いや…?ふつうに歩いてきたけど」
「そう?鳴海の顔、赤いから走ってきたのかと思った」
「えっ……そっかぁ……なんでだろ」
うわ……。俺…かっこわりぃ……。何こいつ見て赤くなっているんだ。
でも、俺じゃなくったって、こんな顔向けられたらそうなるだろ。実際、さっきから女の人の視線をものすごく感じる。
きまり悪くなって視線を外すと、克哉の手がすっと俺の頬に伸びてきて軽く触れた。
「なっ……なにしてんだよ」
「うん。熱があるわけじゃないんだね。よかった」
こういう恥ずかしいことを、人目も憚らずナチュラルにしてくるからだろっ…。気づけよ……。
思わす手を振り払ってしまったが、克哉はそんな俺の態度に動じることなくクスリと余裕な笑みをうかべている。
「は…早くいこーぜ。渋谷だろ。見たいものがあるんだろ」
「うん」
俺たちは、電車に乗り込み渋谷へ向かった。
***
目的に着くと、さすが土曜日のお昼前。スクランブル交差点は人の波が行ったり来たりしている。その動きを見ているだけで人酔いしそうになる。
俺たちはその交差点を渡るために信号待ちをしていた。目の前には、女子高生のグループやサラリーマンらしきスーツの人、そして数組の男女のカップルがいる。
信号が青に変わった瞬間、周りが動きだし大きな波を作り出した。目の前にいた男女のカップル達は、お互いがはぐれてしまわないように体を寄せ合い、腕を組み、手を取り合い歩き出す。そんな光景に目を奪われていたせいか、俺は後ろから来た人に体を突き飛ばされて片膝をついた。
「鳴海!大丈夫?」
ほんの少し前を歩いていた克哉が振り返り手を差し出した。俺は、その手を受けとろうとしたが、とっさに引っ込めてしまった。差し出されたその手を見つめるだけで、受け取ることができなかった。
克哉は優しい表情で俺を見つめ、その手をそっと俺の頭に置きポンポンと軽くたたくと、瞳の奥が一瞬寂しい色に変化して見えた。
ヤバい……傷つけた……。
「ごめん……。鳴海。」
「え…?いや…俺がぼっとしてただけだし……」
なんでお前がそこで謝る……。それはオレのセリフだし……。なのに、意気地のない俺は、核心を避けるため思うような言葉が出てこない。
克哉の気遣いはいつも俺の先を行く。いつもコイツには敵わないと思ってしまう。
俺は自力で立ち上がると、克哉は腕を組み何やら考え込んでいたが、何かを思いついたようで満面な笑みを向けていった。
「ちょっと、行き先変更していい?少し歩くけど…」
「別に、今日お前に付き合うって来てるんだから…」
「うん。デートだもんね。」
恥ずかしいヤツ…。うれしそうな顔しやがって…。
良かった…さっきの事あまり気にしてないよな…。大丈夫……だよな…。克哉のいつも通りの振る舞いに俺はこうして甘えていた。
***
どこへ行こうとしているのか、何度か尋ねるのだか、「ついたらわかる」としか言ってくれず、終着の分からない道のりはあれこれと思惑を勘ぐってしまう。
しばらく歩いていくと、賑やかだった街並みはいつの間にかひっそりとした通りへと変わっていった。
右手には都内をぐるぐると一日中回る線路、左手には大きな公園だろうか、整備された草木の柵がずっと奥までつづいている。
ふと克哉が、目線は前を向けたままポツリと言った。
「ねぇ…。鳴海。俺の事……怖い?」
「はぁ?何言ってんの?怖いとか意味わかんねぇ」
突然何を言い出すかと思えば…。俺は、克哉の横顔を見上げ真意を探ろうとした。
「俺ね。ちょっと焦ってるのかも……」
「え?なに?」
「鳴海がかわいすぎるから……」
「ばーか。お前眼科行ったほうがいいぞ」
俺は照れもあって、茶化したような口ぶりで受け流そうとした。普通男相手にかわいいなんて、思っていてもストレートに言わないだろう。
すると普段よりほんのちょっと低い声で言った。
「真面目に言ってるんだよ。最近の鳴海、みんなに愛想いいから……」
なっなに…もしかして、焼きもちを焼いているのか??そう思ったら、急に顔に熱が集中してきた。
「俺は、別に周りにいい顔してるつもりはない。」
「うん。わかってるよ。けど、この間、山川に聞かれた……。俺らが、一線を越えてるのかって……」
「バッ……カッ…。なんつー話してんだよお前ら。いいかげんにしろよ」
すると、克哉は俺の腕をグイッと引っ張り立ち止まった。
「鳴海。俺、けっこう真面目に言ってるんだよ。俺は、ホントは今すぐにだってそうなりたいって思ってるんだよ」
「そ…そうなりたいってっ……」
「鳴海は俺のだって、誰にも取られたくない」
そういうと、ぎゅっときつく抱きしめられた。
克哉の心臓の音が頬を伝わって俺のものと共鳴しだす。そもそも、こんなにも感情をむき出しにするのはそう多くはない。俺は、克哉の気持ちはずっとわかっていた。お互いの気持ちを確認したあの後から、何度かそういう雰囲気になったことはあったが踏み出せずにいた。
なんで?
そう、その大事な部分を俺は放置しているんだ。克哉の優しさに甘えて……克哉一人をこんなにも苦しめているのだ。
「はい。終り。……いこっか、もうすぐだよ」
克哉は抱きしめていた腕をほどき、何事もなかったように歩き出した。その背中を見つめていたら、克哉の気持ちが透けて見えてくる。
ごめん……克哉。その一言すら声に出して言えない俺……。本当に情けない。
「ついたよ」
そう克哉が振り返り、指差す方向は竹下通りだった。
***
さっきのスクランブル交差点より、人の数が圧倒的に多い。何だって、こんなところに来たんだ。
「こんな人ごみ……。」
思わず声に出てしまった。はっとして克哉を見上げると、にやりと笑った。
「たくさんでしょ。この通りにいる人たちはさぁ、自分の事で精一杯なんだよ。だから、はい」
そういって克哉は、左手で俺の右手をポンと軽くたたいた。
「えっ…?」
「手…。誰も気が付かないよ。」
軽く触れている克哉の左手。その触れている部分がジリジリと熱をおびてくる。意識が集中する指をゆっくりとお互い交互に絡ませていく。
街の中で堂々と腕を組んだり、肩を抱き合ったり、恋人同士なら普通にできる行為も俺たちには許されないって何度も目の当たりにしてきた。
ただ、そばに居るって実感したいだけなのに。一緒にいるって感じたいだけなんだけど……。でもやっぱり俺は子供なのだろう…。今はこうしているだけで一杯一杯なんだ。
「鳴海?さっき本当は、つなぎたかったでしょ?」
「――――!バッ……う……うん」
「おっ。素直だ。嬉しい…」
俺たちは、ゆっくりとあちこち見て回った。可笑しいぐらいに、誰も気が付かない。それがかえって、ちょっと面白くなく見せびらかしたい衝動にさえ駆られるから人の心は不思議だと思う。そんなことを考えながら、ふと今日克哉は、目的があってここに来たことを思い出した。
「そういえば、何か探してたんじゃねーの?ここにあんの?」
「うん。俺ね。鳴海とお揃いのものが欲しくて」
「お揃い??」
予想もしていなかった克哉の言葉にそう聞き返すと、いきなりつないだ手を俺の目の前に出して指をさした。
「ココにはめるもの」
「おっ……おい。手あげんなっ」
俺は横目で克哉をにらみながら、もう片方の手でつながった手を押し下げた。
見せびらかしたいとは思ったけど、やっぱり恥ずかしい。
俺たちは、女の子たちがたくさん群がっているアクセサリーショップに入り、指輪を探した。こうして、二人で指輪を選んでいても案外周りは何とも思わないらしい。みんな自分のものを探すので一生懸命だ。
俺たちは、さんざん悩んだ挙句一番シンプルなシルバーの指輪を選んだ。そして、普段は首から下げられるようにとチェーンをそれぞれ買った。
***
竹下通りも出口に近づく、何げなしに時計を見るとかなりの時間が過ぎていた。
「わっ。俺たちココに3時間半もいたのかよ…。楽しいと時間すぎんのわかんねーよなぁ」
思わず本音がポロリと零れた。
「よかった。鳴海が楽しいって思ってくれて」
「お…俺は別にどこに行くとか、そんなのお前がいればいいんだよ」
俺は、今言える精一杯の気持ちを口にした。こんなんで、伝わってくれるのかわからないけど…。
すると、克哉は突拍子もないことを言い出した。
「時速100メートルってとこだね」
「え?何が…?」
「竹下通りってだいたい360mなんだって」
「へぇー。それで?」
「今日、初めてこうして手をつないで一緒に歩いた俺たちの速度」
「時速100メートルって、どんだけのろいんだ。カメかっつーの」
実際そんな速度でこの通りを歩いてきたんだと思ったら可笑しくなってきた。
でも克哉は真剣な表情で俺に視線を向けた。
「でも、ちょうどよかったでしょ?俺……ちゃんと待ってるから。…ずっと鳴海と一緒に歩いていきたいから」
不意を突かれた。
克哉の言葉に、愛しさが込み上げてきた。いつだって、克哉は俺を一番に考えてくれる。その想いに応えたいと言葉にできない感情が溢れる。そう認識してしまったら考えるより行動が先に出てしまった。俺は、つないでいた手に力を込めて引っ張り、バランスを崩し前かがみになった克哉にキスをした。
克哉の驚いた間抜け面が、かわいくて、愛おしくて腹を抱えて笑った。
「克哉……。ありがとな……」
俺たちは指輪をはめた手をつなぎ、表参道通りを駅に向かって歩き出した。
Fin
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あとがき(…のようなもの
最後まで読んでいただきありがとうございました。
鳴海と克哉のセカンドステージのスタートいかがでしたでしょうか……。
途中「あれ?」と思われた点はなかったでしょうか……。
(自分で言っちゃお)前作『気づかされる想い』での、山川くんと克哉のやり取りの一コマが出てくるのですが、克哉は山川に対して、まるで鳴海とは「一線を越えた仲」であるようにふるまうんですよね。それに対して、山川はただ「あてられた~」と嘆いていたのですが……
実は、しーーっかり、山川の挑発にのせられていたんです。意地でも負けたくない男心を書いてみたんです。まぁ、そんな心も鳴海の前では、木っ端微塵に打ち砕かれますけどね…。
今回は、いつも教室がメインのお話ですが、たまには外へ出してみようと、遠い昔の記憶を
引っ張り出して情景を描きました。渋谷から明治神宮を通って竹下通り、表参道は、よく歩いた道のりです。今はだいぶ変わっているのだろうって思いましたが、グーグルさん(便利ね^^)で調べたらあんまり変わってない。特に渋谷から明治神宮までは何もないど、好きな通りでした。
最後に、この表題はこだわりがありまして、ピクシブでの参加グループの人数が100人超えたよ~。お祝いしよう!っていう企画でして、お題は「街中で手をつなぐ」だったんです。
あたしは、どーーしても100にまつわることを書きたかったんです。一人連想ゲームをして
「速度」にたどり着いたんです。でも、分速100メートルじゃ、競歩だし、時速100メートルは
ホントにカメかって!でも、その速度でもおかしくないところ……。それが、竹下通りでした。
今鳴海と克哉のふたりの速度はこんなものです。
これから、二人の心もお互いに成長し少しずづ速度が上がっていく、そんなストーリーを展開していきたいと思います。
今回、表紙・挿絵にはピクシブを通して知り合ったセルティちゃんに描いていただきました。
本当に素敵なイラストありがとうございました。
ここまで長文、読んでくださり大変感謝申し上げます。
ありがとうございました


