航空書簡へ写真や薄い紙片等の封入が可能だった件についてはご存じの方も多いでしょうが、その根拠をいざ調べるとなると時間がかかりますので備忘録としてここにまとめておきたいと思います。なお、引用した規則文は閲覧出来た最新のものを使っていますが、内容としては当初から条数以外に違いは無いようです。

 

航空書簡は令和5年(2023年)9月30日をもって販売はおろか制度まで廃止されたことは今さら話題に出すほどではありませんが、UPUブカレスト条約が発効した平成18年(2006年)1月1日から写真や薄い紙などを封入することが出来るようになっていました。

 

廃止前の国際郵便約款(2023年9月30日以前)には

 

 

第19条

 

5.航空書簡は、次に掲げる場合を除き、これに他の物

  を封入し、その外部に他の物を添付して差し出すこと

  はできません。

(1)全体の重量が25グラムを超えない範囲内におい

  て、写真、紙片等で薄い物を封入する場合。

(2)全体の重量が25グラムを超えない範囲内におい

  て、その外部に薄い紙又はこれに類する物を容易に

  剝がれないよう全面を密着させて添付する場合

  (料金支払のための郵便切手以外の郵便切手(記念の

  ため通信日付印の押印を受けたものを除きます。)

  又はこれに類する物は裏面に添付する場合に限り

  ます。)

 

 

 

とありました。ところが、「万国郵便条約の施行規則」(2023年6月1日現在)によると、航空書簡については以下のとおり、

 

 

 

17-107 各種の郵便物について適用する特別規定

 

2.航空書簡

 

2.1 航空書簡は、長方形とし、郵便物の取扱いに

  支障のないように作成しなければならない。

2.2 航空書簡の表面は、宛名、料金納付並びに業

  務上の記載及び票符のためにあてる。この表面には、

  必ず「Aérogramme」 (「航空書簡」の意)の印刷

  した表示(これに相当する差出国の言語による表示

  が併記されてもよい。)を付する。航空書簡は、いか

  なる物品も包有してはならない航空書簡は、差出国

  の法令が認める場合には、書留として発送することが

  できる。

2.3 各加盟国又は指定された事業体は、17-104.3に

  定める制限内において、航空書簡の製造及び販売の

  条件を定める。

 

 

(英文)2018年版 ~該当箇所~

 

Article 17-107

Special provisions applicable to each category of items

 

2     Aerogrammes

 

2.1  Aerogrammes must be rectangular and be so made 

       that they do not hamper the handling of the mail. 

2.2  The front of the aerogramme shall be reserved for 

       the address, the prepayment and service notes or 

       labels.

       It shall bear the printed indication “Aerogramme” 

       and may also bear an equivalent indication in the 

       language of the country of origin. An aerogramme 

      shall not contain any enclosure. It may be registered 

      if the regulations of the country of origin so permit. 

2.3  Each member country or designated operator shall 

       fix, within the limits defined in article 17-104.3, the 

       conditions of issue, manufacture and sale of      

       aerogrammes.

 

 

 

とあり、あくまでも「何も包有してはならない」ことになっています。ついでに言えば❝contain❞を使っていますから、そのニュアンスから外部への紙片貼付も原則ダメなのでしょうね、たぶん。それにしても国際規則ではNGなのに国内における規則(国際郵便規則・国際郵便約款)ではOKとは、これはどういうことなのか・・・その種明かしは条約と併せて締結された「通常郵便に関する施行規則の最終議定書」にありました。UPU加盟国共通の規則とはいえ各国の郵便事情は様々で、国々の内国郵便規則とのすり合わせで例外的措置がとられている場合がそこそこあります。その最終議定書(final protocol)の一文に次のようなものがあります。

 

 

 

第16条 各種類の郵便物に適用される特別規定

 

1 アフガニスタン及び日本国は17-107.2.2の規定に

   かかわらず、自国の内国制度の範囲内において適用

  される条件と同様の条件に従って、航空書簡に写真

  又は紙片を添付又は封入する権利を留保する。

 

 

(英文)

 

 Special provisions applicable to each category of items

 

1   Notwithstanding article 17-107.2.2, Afghanistan and 

     Japan reserve the right to enclose or attach pictures 

     or slips of paper in aerogrammes under the same  

     conditions as in their domestic service.

 

 

 

つまり、これは規則改正とはいえ、どちらかといえば特例に近いですね。これによると航空書簡に写真や紙片を添付して差し出すことが出来るのはアフガニスタンと日本だけということになりそうです。日本の場合はやはり郵便書簡の存在が大きいと言えます。航空書簡を郵便書簡と同じ体裁に規則上整えたということは間違いありません。

 

他物封入が認められたので裏面の「この郵便物には、なにも入れることができません」という文言は必要なくなりましたが、文言を削除したものが発売されたのは平成22年(2010年)4月1日のことでした。スタンプ等での文言抹消もせず4年あまりも放置されていたことになります。いかに航空書簡の売れ行きが悪かったかが伺えます。

 

(文言入り)

 

(文言なし)

 

 

 

郵便書簡についてはそれが誕生した昭和41年(1966年)7月1日から全体の重量が10グラム以下の範囲で他の物を封入することが認められており、昭和51年(1976年)1月25日からはその重量が25グラムまでに増やされています。

 

郵便書簡は速達や書留など特殊取扱いにすることが出来ましたが、航空書簡についてはそれが不可となっていました。後に昭和41年(1966年)1月1日より別配達の扱いが認められ、昭和46年(1971年)7月1日からは書留扱いも認められるようになりました。

 

航空書簡は昭和39年4月1日から認可を受けた上での私製が可能となりましたが、郵便書簡は現在でも私製は不可となっています。

 

日本では航空書簡は廃止になってしまいましたがこれはあくまでも日本の事情であり、世界的にはまだ存在します。なので外国来として航空書簡が届くことは今後もあるでしょう。