息子の高校生活最後の試合の応援のため、菜々子は甲子園のアルプススタンドにいた。


あの子は高校で野球を辞めるかもしれない。


この2年と数ヶ月、母子ともにいいことばかりではなかった。



それでも我慢強く野球を続けてきた息子のグラウンドでの最後かもしれない姿を見て、菜々子は声をあげずにはいられなかった。


「航太郎がんばれ!がんばれよー!」



本当は女の子のお母さんになりたかった。


そんな一文で始まったこの話はとにかく胸糞悪く、世の高校球児の母親はこんな思いを抱えながら我が子を応援しているのかとどんよりした気分で読み進めました。


ブランチで作者の早見さんが登場されて、違う視点で高校野球を書きたかったというようなことを仰っていたような。


確かにまるで違う視点、母親目線で書かれていました。


息子の航太郎がまるで我が子であるような感覚で読んでいた母も多いと思います。


物語は、序盤の描写とは違う方向へ向かい、胸糞悪さも次第に薄れていき、もう最終的にはひたすら航太郎を応援するだけの私。


「女の子のお母さんになりたかった」という気持ちと対比する言葉も聞かれます。


全力で頑張るお母さんにお薦めする1冊です。