一部始終を見ていたのは僕だけ | だてんしのひとりごと+

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悠々自適に生きるスローライフ俳優・酒井康行のブログです
日本新劇俳優協会理事・いしかわ観光特使・舞夢プロ所属

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今日の午後、電車に乗った時のこと。

空いている席に座ろうとしたら、両隣のご婦人達が「あっ」と声を出して僕を制した。

何事かと思ったら、座席の背もたれの部分に蛾が一匹とまっていたのだった。

僕は教えてもらったことにお礼を言い、他にも空いている席があったので向かい側の席に座った。

その後も蛾はぴくりとも動かず、たまたま乗り合わせた他人同士と思われるそのご婦人達は、駅に停車するたび乗り込んで来て座ろうとする人に注意を促し、しかしその小さな部外者を排除する事もできず、互いに苦笑いをしていた。

やがて片方のご婦人が降り、替わって乗り込んで来た1人の紳士。
残ったご婦人に教えられて蛾の隣の席に座ると、やおらティッシュを取出し、実にスマートな動作でこともなげに蛾を包んでポケットに入れた。
ご婦人がその行動に気づかないほどスマートに。

小さな部外者がすでにいなくなったことをまだ知らないご婦人は、やがてまた1人が乗り込んで来て例の席に座る瞬間に声をかけそびれ、その人が背中で蛾をつぶしてしまったことを想像したようで、実にバツの悪そうな顔をしていた。

僕はご婦人に、もう大丈夫なんですよと一声かけてあげたかったけれど、周りはすでにそれまでの成り行きを知らない人ばかり。
躊躇しているうちに、声をかけるタイミングをすっかり逃してしまった。

紳士は紳士であくまでマイペース。
ご婦人の苦悩に気づく気配など微塵もない。

やがて電車は終点に着き、例の席から降りて行く人の背中と座席を交互に確認し、ホッとしたような、合点がいかないような顔でそのご婦人は降りて行った。

この話から得られる教訓は2つ。

ひとつは、躊躇しているとチャンスを逃す。
ひとつは、スマートすぎる親切は、時に人を苦しめることもある。