「龍嚴寺龍穴図屏風」

作品の見立ては、酒田の由緒あるお寺の龍穴から働き者の龍達が出てくる様を描いています。同時に、連綿と続いて来た1200年以上の歴史になぞらえて、画面右の二匹の白龍の夫婦から巣立ってゆく若い龍達の家族図でもあります。

画面を斜め横からとか動きながらとか、この金屏風を観てもらうと色々な仕掛けやドラマがありますので、大人の目線、子供の目線から沢山の人に長く観ていても飽きない八匹の龍神図です。

今回の屏風は事前にどの様な環境に配置されるか調べてから制作いたしましたので、正面から見るよりも、斜め横から見たり、歩いて動きながら見る、事を配慮して構成した絵です。

毎回、大きなお仕事をした後は、よくまぁ描けたものだと思います。決して良く描けたではなく、よく描けたねの方です(+_+)。体力も気力も使い果たしました。よく仕上がったな、と、お仕事が終わって時間が経つて振り返ると、他人事のように思います。

今回は、金箔の二重張り、多分1000年以上の耐久力を持つ屏風です。縁の緞子の表具張りも全て自らしました。特に縁の緞子は表具屋さんに任せられなかったから、私の方が上手に張れるのでね。
さて、開眼式に和尚様に屏風の龍の眼に空いた小さな2ミリほどの点に墨を入れて頂いた時、そこに居た一同が目にしましたが、作品がかわりました。不思議ですね。ぜんぜん違う絵になったような?絵が動き出したような。ちゃんと拝む人が拝んで神様仏様の手続きをした後に画竜点睛をすると作品が作動するというか、お仕事をし始めるのですね。過去に「麒麟図」の時もそうでしたが、立派な詔やお経や儀式をするとこういう事になるのですね。
東北の守り神、出羽三山、庄内には沢山の龍神伝説があります。新しい1000年の屏風の宿主になってお寺とご家族を守って頂くと有難いですね。