「雁夜、一緒に組まないか?」
言峰綺礼の言葉が一瞬、天使の囁きかのように思えた。
魔力の少ない俺にとっては、有利だからだ。
しかし、かといっても敵、されど敵。
何をたくらんでいるのか分からない。
さらに言峰綺礼の事だ。
よく分からない男。
それだけで敵対心が溢れるが、何故か落ち着いている。
敵だと認識しているのに、どこか安心感がある。
これはまさか、組んでも良いと思っているのか。
「返事は。」
どうしようか、返事は・・・
此処ではいと言えば、間桐の家に報いはある。
いいえと言えば勝利は遠ざかる。
答えは・・・
「おじさん。」
不意に優しい声が聞こえ、振り返る。
そこには桜ちゃんが。
今は夜中。
子供が気安く起きれる時間帯ではない。
「人のうちの玄関で、何してるの?」
桜ちゃんの背後から、多くの蟲が現れるのが見えた。
いつの間にか桜ちゃんは、蟲を操れるようになっていた。
「早く、その人から離れて。」
淡々として口調だが、桜ちゃんは完全に怒っている。
これは俺も始めてみた。
「じゃないと、もっと沢山の蟲が襲い掛かるよ。」
「桜ちゃん・・・」
だんだん蟲達の数が増え、玄関が蟲で埋め尽くされていく。
そんな中でも、言峰綺礼は表情一つ変えず、桜ちゃんを見てる。
「桜・・?一年前とは別人だな。」
「そんな事はどうでもいいから、早く離れて。」
険悪な雰囲気が、玄関に鳴り響く。
蟲の数が夥しく増えていく。
「此処では話が出来まい、雁夜を借りるぞ。」
綺礼が俺に近づく。
ヤバい、肝心な時に動けない。
ふと、目の前に影が現れた。
「!・・・桜ちゃん・・」
綺礼と俺の間に桜ちゃんが立ちはだかる。
「貴方に、おじさんは渡さない。絶対に。」
四方八方に蟲が現れ、とうとう囲まれる形になった。
それでも、それでも綺礼は表情一つ変えない。
さすが聖杯戦争関係者とはいえ、凄い。
綺礼の口から、溜息がこぼれた。
「こういう事に時間をかけるのは好ましくない・・・私を困らせるな。」
いけない・・・いけない・・桜ちゃん
コイツだけは、ヤバい。
「こちらへ来い、雁夜。」
全身の血液が、冷め切るように感じた。
行かなきゃ。
間桐のためにも、桜ちゃんのためにも、
向こうへ行かなきゃ。
身体が震える。
勝手に、身体が動いて綺礼の方へ、招かれる。
イカナキャ・・・・
急に、暖かい温もりに包まれた。
桜ちゃんが、俺を抱いている。
優しく、母親かのように。
「大丈夫だよ、おじさん。」
優しい笑顔で、桜ちゃんは俺に投げかける。
「大丈夫、おじさんを困らせる人は、私達が駆除する。」
- オイデ、 バーサーカー -
突如、黒く歪んだ霧とともにバーサーカーが現れる。
バーサーカーは俺のサーヴァントであり、この前令呪を臓硯に取られたばかり。
ーそんなっ・・・
令呪は、桜ちゃんの右手の甲に、しっかりと刻まれている。
そして何より、バーサーカーが落ち着いている。
俺の時は、狂いに狂って、暴れまわっていたのに。
今となっては、落ち着いて攻撃もしてない。
「ねぇ、神父さん・・・これは警告。今度おじさんに手を出すようなマネしたら・・・・砕き殺すから。」
バーサーカーにそっと触れる桜ちゃんの目は本気だ。
「ふん・・・それは怖いな。」
っていう雁綺桜の小説はどこで見れますか?