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cookieの雑記帳

興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

今年3月に83歳で亡くなられたミステリー作家の内田康夫さん。デビューの頃からずっと追いかけて全作品を読んできたこともあり、とてもショックでなかなかブログにも取り上げられませんでした。

作家としてデビューしたのが45歳を過ぎてからでしたので、かなり遅いです。しかしその後の快進撃といったら、たちまち流行作家の仲間入りをし、あれよあれよという間に誰もが知っているようなビッグネームになりました。
魅力的な登場人物とやわらかな文体、読後感の良さは他の追随を許さないものでした。
内田康夫さんの作品といえば、その大半を占める浅見光彦シリーズがもっとも知られており、こちらはほとんどがドラマ化されている国民的シリーズと言えるでしょう。
その他は数はぐっと減りますが、いくつかのシリーズがあって、信濃のコロンボこと竹村警部シリーズ、和泉教授夫妻シリーズ、そして警視庁の岡部警部シリーズなど。
今回取り上げる『多摩湖畔殺人事件』は岡部警部シリーズに分類されることが多いようですが、実は岡部警部は脇役で、主役は東大和警察署のベテラン刑事、河チョーこと河内刑事(若き岡部警部を指導した)と事件の被害者の一人娘である車椅子の美少女・橋本千晶さんです。

光文社文庫の書き下ろしで刊行され、その後、愛蔵版などを含め何度も再刊されている人気作です。

ほぼ原作に忠実なコミックスもあります。


他の内田作品同様、この作品もこれまでに2時間ドラマの枠で何度も放映されてきましたが、先日またまたドラマ化(5度目!)されました。
ミステリー作品のドラマ化に関しては、長編作品を2時間枠に収めるという制約上、かなり原作に手を入れなければならないこともわかってはいるのですけれど、好きな作品ほど原作との違いに失望することが多く、今回の作品もあまりに原作から乖離しており、オープニングからちょっとどうよという気持ちになったので、取り上げてみました。あくまでも個人の感想です。以下ネタバレなどがあります。

今回のドラマは、タイトルからすでに「警視庁 岡部班2」となっていたため、イヤな予感がしたのですが、それが的中。河チョーに相当する役(すでに河内刑事という役ではない)の田口浩正さんは好きな俳優さんですがこの役のイメージではないなぁ(ここでは岡部警部の部下設定になっているので、いいのかもしれませんが)。
ヒロイン役の志田未来さんも清潔感のある女優さんで(14歳の母を演じていたのが懐かしいです)、これまでこの役を演じてきた伊藤つかささん、中谷美紀さん、安達祐実さん、緑友利恵さんに比肩すると思いますが、今作では容疑者の1人のような扱いになっていたり、気の強い部分が強調されすぎていて、原作のヒロインの印象とは全く別物になっています。
原作では、父親を殺された千晶(控えめだけれど芯はしっかりしている)と、若くして妻子を亡くしている河内が、まるで本当の父と娘のような新しい絆を築いていくところ、病魔に勝てなかった河内の娘に好意を寄せていた岡部警部が、この2人を見守りながら(物語上は)裏方に徹しているところ、岡部警部の部下である安田刑事が河チョーとの現場経験を積んでいく中で成長していく姿などが見どころなのですが、今回はヒロインが「父のことは憎んでいます」などと言ったり、本来は安楽椅子探偵なのに(後の短編では河内と一緒に外に出たりしますが)自ら調査に乗り出したり、車椅子設定の必然性もあまり感じられなくなっていました。
そして、今作が岡部警部を主役にした脚本(今までもありました。近藤真彦さん主演の作品)になっていることと、テレビ映えするためにかアクションシーンが多いこと、やけに岡部班の面々がコメディタッチで、原作の持つ落ち着いた雰囲気、地味だけれども登場人物たちの気持ちの動きを読者に語りかける内田康夫さんのストーリーテリングの巧さを台無しにしています。さらに原作では関わらない信濃のコロンボこと竹村警部まで登場し(意味不明)、中途半端に原作の設定を引用しただけで、内田作品に常に流れている「人間の情」がさっぱり描けておらず、上っ面をなぞったような感じになってしまい、いっそ別のタイトルにした方が良いのではないかというくらい自分にとってはイケていませんでした。原作を知らずに観れば、ドラマとしては面白く仕上がっているので問題はないのかもしれませんが。
ミステリー作品をTVドラマで観る良さはもちろんありますが、やはり原作を超えるのはなかなか難しいのだなと改めて感じた次第です。

参考までにこれまで放送された『多摩湖畔殺人事件』をまとめておきます。
1. 1987/5/19 火曜サスペンス劇場「182566の死者」(日テレ)
河内: 芦田伸介
千晶: 伊藤つかさ
岡部: 岸部一徳
平井: 安藤一夫

2. 1995/9/15 金曜エンターテイメント「多摩湖畔殺人事件」(フジ)
河内: 山崎務
千晶: 中谷美紀
岡部: 渡辺いっけい
平井: 岡本健一

3. 2007/8/31 内田康夫旅情サスペンス岡部警部シリーズ 『多摩湖畔殺人事件』(フジ)
河内(神谷): 泉谷しげる
千晶: 安達祐実
岡部: 近藤真彦
平井(上田): 植草克秀
小坂: 大杉漣

4. 2012/7/18 水曜ミステリー9「多摩湖畔殺人事件」(テレ東)
河内: 遠藤憲一
千晶: 緑友利恵
岡部: 葛山信吾
平井: 内田朝陽


5. 2018/11/12 内田康夫サスペンス「警視庁岡部班2」〜「多摩湖畔殺人事件」(TBS)
河内(坂口): 田口浩正
千晶: 志田未来
岡部: 高橋克典



過去の作品はBSやCSチャンネルで時々再放送していますので、見比べてみるのも一興です。
タイミングよく、12月4日に日本映画専門チャンネルでは 1. が、また12月25日にファミリー劇場で4. が放送予定になっています。

前述しましたが、『多摩湖畔殺人事件』で誕生した河内刑事&橋本千晶コンビは、このあといくつかの事件譚に登場します。


『少女像は泣かなかった』(中央公論社 C☆NOVELS→中公文庫・角川文庫、愛蔵版もあり)に「越天楽がきこえる」「ドクターブライダル」「踏まれたすみれ」「少女像は泣かなかった」の4編が収録されています。
このコンビのさらなる活躍が期待されていましたが、内田さんの逝去により叶わぬ夢となってしまいました。

これらの短編のうち「ドクターブライダル」が「多摩湖畔殺人事件」にも登場した遠藤憲一さん、緑友利恵さんコンビでドラマ化されています。
また、「越天楽がきこえる」も中村梅雀さんの竹村警部シリーズでドラマ化されていますが、役柄の設定が大きく変わっており、河チョーも千晶さんも登場しない作品になっています。

6. 2009/9/9 水曜シアター9 信濃のコロンボ 事件ファイル18 「越天楽がきこえる」(テレ東)


7. 2013/5/22 水曜ミステリー9「鬼刑事と車椅子の少女」(テレ東)


写真はネット上にあるものを使用させていただいています🙇🏻‍♂️