祝「たまらん!!!」アナログ再発! 異端の猛毒ファンク! Hoodoo Fushimi の音楽 | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

ここ近年、特に海外での評価が高まっているエレクトロ・ファンクの異端児、フードゥー・フシミ(Minoru “Hoodoo” Fushimi、伏見稔)。活動していたのは80年代前半からの約十年間。いわゆるオールドスクールと呼ばれる世代です。ライブは行わず、横須賀の自宅スタジオで作り上げた録音を密かに流通させていました。ファンク、ヒップホップに日本の伝統音楽のエッセンスを練り込み、風刺の効いた詩でコーティングした、中毒性の高い作品群は他の追随を許さない独創的な匂いを放っています。
どんな音楽かは言葉では説明しにくいので、ひとまず聴いていただければと思います(WEB上に音源はいろいろあります)。

1983年にひっそりデビュー。日本人のアーティストとしてはかなり早い段階から宅録を行なっていました(歌も演奏もその他の作業も全て一人でやっていました)。
1992年までに7インチシングル1枚とフルアルバム4枚(LP2枚、CD2枚)をリリースした後は、表舞台(もともと裏舞台?)から姿を消してしまい、つい数年前まではネット上にもほとんど情報がなく、ウード奏者に弟子入りしたという以外、消息不明の状態でした。


デビュー当時、Fushimi氏は神奈川の県立高校で英語教師をしており、私もその薫陶を受けた1人です。決して出来の良い生徒ではありませんでしたが...(汗)
授業も個性的で、教科書などは使わずに視聴覚室で映画を見ながらの台詞の聴きとりなどをよくやっていた記憶があります。それが「ブレイクダンス」だったりするのが今では笑えます(ヨガクラブの顧問で、実際にブレイクダンスをやっていました。頭でクルクル廻るやつとか)。英語のリエゾンなどにも熱心でしたね。その当時の筆記重視の受験英語からはかなり遠いところにあったと思います。楽しかったけど。
デビューシングルである「ハコダテ・レディー」がリリースされたときは学校内でも話題になり、校内新聞にも採り上げられました。まぁ、当時流行していた音楽とは全く方向性が違うので、曲の内容そのものが話題になったという感じではなかったですね。
すでにアルバム制作は進んでいたようで、「ヘモグロビンのせいじゃない」などのタイトルは聞いていましたし、音のサンプリングの話など、授業中だったか休み時間だったか忘れましたが、説明してもらった記憶があります。
翠嵐時報 第174号 昭和58年11月9日(まだ手許にあった!)

そんな氏のファーストアルバム「Thanatos of Funk」が発売になったのは私が高校を卒業したあとで、ネットの無かった当時はどこで手に入るのかわからず、直接本人に電話して尋ね、横浜駅西口の岡田屋モアーズの1階にあったレコード店で買いました。白いジャケットの方です。




その後名前をHoodoo Fushimiに改め、約2年ごとに「ケンカおやじ」(1987)「たまらん!!!」(1989)「くさや」(1992)と、超個性的なアルバムのリリースがあったのですが、以後ぱたりと音沙汰がなくなってしまいました。
前述したように、その活動を簡単に調べる術はなく、ネット時代になってからは時々検索してみたりしていましたが、情報はほとんどありませんでした。




ところがラストアルバムから20年以上過ぎた2010年代後半になって、何故か海外のマニアに再発見され、過去のアルバムが高値で取り引きされるようになってきたあたりから状況が変わってきます。
そして2017年、オーストラリアのleft ear recordsからベスト盤ともいうべき12inch vinyl 2枚組の「In Praise of Mitochondria」が突如発売となり、まさかの復活となりました。主に1st, 2ndアルバムからのセレクションで、既発曲のリミックスや未発表音源も収録。
まさか21世紀になって伏見氏の新譜がリリースされるなんて、思ってもみませんでした。


これを機に、セカンド、サードアルバムからそれぞれ「ケンカおやじ/負けず節」「てんそく小唄/帰ってね」が国内のJet Setから7inchでシングルカット、更に4thアルバム「くさや」がU.Sの
Good Find Recordsから12inchアナログ化と、立て続けにディスクがリリースされました。
かなりマイナーな自主制作盤がこれだけ長い年月を経て、再発されるという奇跡。

この復活劇に合わせたご本人へのインタビューがネットでも読めるので詳しくはこれらを参照していただけると良いのですが、ここではかいつまんで。
なぜぱたりと作品が出なくなったのかなどについても語っています。必読です。

録音や編集に必要な機材は1982年頃までに自宅のスタジオに揃ったそうで、以後10年間にわたり個性的な作品を生み出すことになります。
しかし世の中はコンピューターの時代に変化し始めたため、Fushimi氏もこれまでの機材を売り払ってPCを導入したとのことですが、たびたびのフリーズなど、進まぬ作業に嫌気がさして作品づくりをやめてしまったそうです。それまでの反動からかアコースティックな音に気持ちが向かい、琵琶を弾いたりしているうちにトルコのウード奏者に弟子入りすることになり、やがては自作楽器「琵琶ウード」なるものを開発したり、相変わらずの我が行く道を歩んでいたところ、オーストラリアのレーベルleft ear recordsからコンタクトがあり、コンピレーション盤をリリースすることになったのだそうです。
なるほど、いろいろ謎が解けました。

そして、この復活を機に久々の新曲「斎太郎ファンク」を配信。
更には息子さんであるラッパー Lick-Gとのコラボ作品「takoyaki」や、「Karasu」のFunk remixのプロデュースも手掛け、当時の未発表音源や新作の配信も含め、いやはやなんともファンとしては嬉しいばかりです。


《Discography》

Minoru Fushimi名義
1. ハコダテ・レディー (1983) 7inch vinyl → 7inch vinyl (2020)
2. Thanatos of Funk (1985) 12inch LP




Hoodoo Fushimi名義
3. ケンカおやじ (1987) 12inch LP
4. たまらん!!! (1989) CD album → 12inch LP release (2020)
5. くさや (1992) CD album → 12inch LP release (2019)


6. In Praise of Mitochondria (2017) 12inch LP x2
7. ケンカおやじ (3よりシングルカット 7inch vinyl)2018
8. てんそく小唄 (4よりシングルカット 7inch vinyl)2019


現在、これらの音源はBandcampや主要な配信サイトで全て聴くことができます。本当にここ数年で状況が激変。いい時代になりました。




そして今年2020年は本人も熱望していた、3rdアルバム「たまらん!!!」がイタリアのレーベルottagono design of musicからアナログで復活します(権利関係で「脳出し」は未収録とのことですが、コンピレーションアルバムに収録されているので、良しとしましょう)。これで全てのアルバムがアナログで揃います。
さ・ら・に、デビューシングルである「ハコダテ・レディー/骨まで愛して」もleft ear recordsからの再発が決まり、復活街道を驀進していますね。

各アルバムの収録曲は以下の通り。
目眩を起こしそうなタイトルに、現代社会への痛烈な批判を含んだ歌詞(当時もそうでしたが、数十年経った今でも通用する内容で、意外と普遍的なものだったんだなぁと思う、今日この頃)は、誰にも真似できない世界を構築しています。

《Thanatos of funk》

タナトプシス

ミトコンドリア讃

しんぞーさん

ヘモグロビンのせいじゃない

へんさちさま

フォクシーレディ

ギャルズ・ブルース

パンダ・ステーキ

ディスコ論

どんぱん(プライベート・ファンク)


《ケンカおやじ》

ケンカおやじ

負けず節

肉机

セッカン・ミー

フラれてナンボ

水子の魂百までも

愛は脳震盪

いいヨメサン

悲しき街娘(vo. Akiko Ehara)


《たまらん!!!》

原発ディスコ

列ダンス

てんそく小唄

教室の怪人

もちつき

脳出し

リトル玉の輿

帰ってね(vo. Harka)

アコギだよ

神の御名において


《くさや》

みんなそうでショ!

買弁音頭

宝の島

ロックやるなよ

キノコ雲が見える日まで

ヘラヘラ

ポイポイ節

ある英単語の研究

すってんてんまり

劣等人間

新世界秩序のお手伝い

地元の候補

即死はしない毒

もっと言って

脱亜入欧完成

みんなそうでショ!(パートII

アンコール: フードゥー主張する


In Praise of Mitochondria

肉机

タナトプシス

ミトコンドリア讃

愛は脳震盪

しんぞーさん

水子の魂百までも

フラれてナンボ

すってんてんまり

脳出し

どんぱん(Alternate Version)

ヘモグロビンのせいじゃない

Zennotized Funk


写真はWeb上からお借りしているものあります。多謝🙇🏻‍♂️