内田さんは2015年夏に脳梗塞で倒れ、半身に麻痺が残ったこともあって、その後の執筆活動が厳しい状況となりました。
2014年末から毎日新聞に連載中だった浅見光彦シリーズの『孤道』はこの時点で止むなく中断となってしまいました。
内田さん自身、完結を望んでいましたが、自ら仕上げること能わず、著者存命中にもかかわらず、続きを公募するという、前代未聞のプロジェクトが立ち上がりました。
2017年に中断までの部分までがひとまず単行本として刊行され、あとがきのような形で公募についてのアナウンスが、内田さん本人の言葉で掲載されました。最終的に100編を超える応募があったとのことでしたが、完結編を見ずに内田さんは旅立たれてしまいました。
このたび、その中から最優秀賞を受賞した『孤道 完結編 金色の眠り』が文庫書き下ろしとして、内田さんによる前編とともに刊行されました。
著者の和久井清水さんは江戸川乱歩賞の候補に残ったり、他の公募で受賞した経験もあるとのことですが、公に著作が出るのは初めてになります。
絶筆を補筆完成させた例は、音楽の世界では、モーツァルトのレクイエムやマーラーの交響曲第10番など、広く認知されているものがあります。
書籍に関しては近いところでは北森鴻さんの『邪馬台』が印象に残っていますが、そんなに多くはないのかな?
絶筆ではないですが、他人が部分補筆して刊行したものでは、横溝正史さんの『死仮面』が思い浮かびます。連載一回分の掲載誌がどうしても見つからず、人気の金田一耕助シリーズを埋もれさせるには惜しいとのことで、中島河太郎さんが書き足して刊行(角川文庫)しました。のちに掲載誌が見つかり、本来の形で新たに刊行(春陽文庫)されましたね。
さて、この『孤道』はどんな結末になったのか?
これからまとめて読みたいと思います。