フランス音楽界の大御所と言えるミシェル・ルグランの新譜が出ました。
今回注目すべきは、初めての純粋なクラシック音楽のアルバムだということです。
“いつもの”ルグランとは様相が違います。
ルグランといえば、数々の素晴らしい映画音楽、そしてジャズ。輝かしいキャリアがありますが、もともとはナディア・ブーランジェ門下の作曲家で、20世紀の名だたるクラシック音楽の作曲家たちと肩を並べる存在です。
1932年生まれの今年85歳は、1925年生まれのピエール・ブーレーズの少し年下の世代になります。
以前から自作の映画音楽を演奏会用にオーケストレーションしたりなど、クラシック音楽寄りの仕事もしてきましたが、ここ近年、特にそういった活動が増えている印象があり、ナディアとの約束であった本格的なバレエ音楽『リリオム』を書いたり、現在の伴侶であるカトリーヌ・ミシェルのためにハープ協奏曲を書いたり。そして今回はピアノ協奏曲とチェロ協奏曲です。
ジャケットを見ると、ルグランも歳をとったなぁと思います。
しかし、書いている音楽は決して古臭かったりはせず、ちゃんと現代音楽しています(前衛音楽ではないです)。そしてフランス音楽の伝統を踏襲しています。フランセやダマーズの作品に近い印象かも。
全3楽章のピアノ協奏曲、ソロはルグラン本人が弾いています。ピアノパートは華やかで、高度な技巧が必要だと思われますが、年齢を感じさせない勢いのある演奏です。
ラヴェルのコンチェルトが好きな方は気にいるかな。
チェロ協奏曲も素晴らしく、1970年生まれのアンリ・ドマルケットに書いた作品。P.フルニエ、P.トルトゥリエ、J.シュタルケルらに師事した本格派。パリのコンセルヴァトワール出身ですので、ルグランの後輩になりますね。以前ラ・フォル・ジュルネで来日してたことがあります。
曲は全3楽章ですが、第3楽章のカデンツで指揮者がピアノを弾き、その後に「レントよりなお遅く」と題された後奏があって幕を閉じます。チェロが良く歌っています。
常に聴き手に重心のある音楽を書いてきたルグランなので、独りよがりになりがちないわゆる現代音楽とは一線を画しています。
80代になってクラシック音楽への原点回帰は嬉しいですね。
これとは別に、85歳の記念盤としては↓が出ました。
以前にもご紹介しましたが、ルグランが自らを語った一冊。今年の秋には続編がフランスで出版される予定だそうです。
さらに映画音楽の旧譜の廉価版が再発売。ルグラン関係はこの3枚かな。
代表作の『ロシュフォールの恋人たち』は名曲ぞろいです。
『ロシュフォールの恋人たち』を含めた、ジャック・ドゥミとの共作、長編9本全てのエッセンスを詰め込んだ『ミシェル・ルグラン/ジャック・ドゥミ 作品集』。必聴盤です。
日本語解説付きのこれらが1枚1000円で買えることがすでに間違ってます!!そんなわけで、精力的に活動されているルグラン。今後もますます目が離せません。