まだ前の会社を退職前、
主任が作るべき書類があるとN氏に呼び出される。
約束の場所は、なんとN氏の自宅。
N氏が住んでいるところは、O県では有名な城があり、城下町として古い文化の残るところであり、
私の母もその城下町出身で、地理的には何の問題もなく、N氏の家で会うことを了承した。
近くから連絡し、迎えに出てきたN氏の格好は着物姿である。
ずんぐりむっくりな体系には紺色の着物はよく似合っていた。
家に上がり、仏間を抜け広い床の間に通された。
N氏の家は、それほど大きいというわけではないが、大きな仏壇が目を引いた。
そこへ奥様がお茶とお菓子を出してくださった。
甘いものに目のない私は
ラッキーと思いいただくことに・・・
お菓子はなんと奥様の手作り~本当においしかった
お茶とお菓子をいただきながら、本題へ
勤めていた学校では校長がほとんど一人で書類を作成していたので、「主任」と限定されて書類とやらが不安であったが、誰が作ってもいいようなたいしたことのない書類。
今の学校と比較して作ってほしいとの事・・・
スパイ行為のような書類はなかったので、ホッとしながら、了承~
雇われる前からこき使われているなと思いながら、残りの時間は談笑。
帰り際、玄関に向かう途中、奥様にお礼を申しあげると
奥様「主人をよろしくね。」
N「何言ってる。」
奥様「この人、気難しくて、付き合い難いと思うけど、我慢してもらって・・・」
私「はい・・・
」
奥様「仕事があってよかったわ。十何年家族ほったらかしで中国行って、私が退職すると帰国してくるでしょ。一緒にいると口論ばかりで・・・」
私「はあ~」
N「・・・」
奥様「何もわからないと思うけど、よろしくお願いします。」
私「いえいえ、よく考えていらっしゃるかと・・・」
N氏は相変わらず、何も言わない・・・
私「親戚の法事があるのでそろそろ・・・」
本当に先日亡くなったおじさんの七日供養があり、早めに切り上げたかった。
N「そっか、そっか。そういえばいーぽーさんのお母さんは、ここの出身だったな~」
奥様「あら、どちら?」
私「○○町です。○○中学校の裏っかわです。」
N「じゃ、親戚はそちらに・・・」
私「はい、母方の親戚はほとんど、この町です。祖母は以前、R大学がこの町まだある頃、学生寮で働いていました。」
N氏が勤めていた大学で祖母は働いていたのを思い出し、N氏につたえると
N「ちょっとわからないな~」
と、冷たく答えられた。すると、奥様が、
奥様「あれ、もしかすると、お母さんの旧姓Yさんって言わない?」
意外な答えに驚きつつも
私は「はい。」と答え・・・
奥様「やっぱり、わたし、あなたのお母さんと友達よ~」
驚きの事実が
詳しく聞くと
なんと、母が結婚前に勤めていた料理学校の同僚とのこと。
奥様「わあ~懐かしい。お母さん、とっても素晴らしい人よ。本当にお世話になったの。」
私「そうなんですか」
奥様「じゃ、小さい頃、あなたにも会ったことあるわよ。」
私「えっ、そうなんですか!!!」
奥様「とっても上品な方で、まさしく○○町の人って感じの方」
私「・・・」
母を上品と形容する人に初めてであった。
今じゃ、完全に田舎に嫁いだ農家の嫁。上品のかけらもない。
きっと、今会ったら、幻滅するのでは・・・
その後も「素晴らしい人」を連発され、答えに困っていると、
N氏が助け舟を出し、「わかった、わかった」と、私を玄関まで連れて行き
何とか逃げ出すことに成功。
世間は狭いとつくづく感じた一日だった。
それにしてもよくしゃべるN氏の奥様だったなあ~