(結構長文です。)

 

先日友人から本を借りた。

というかお薦めの本を渡されて読むことになった。

それはチェーホフの「ワーニャ伯父さん」。

 

その友人は半年位前に「ドライブマイカー」を見て大感激!

私にも盛んに「ワーニャ伯父さん」一度読んでみて、

と言っていた。

 

学生時代のグループラインにも

その興奮を書き込みしていたが、

他には誰も観ておらず、

又観たいと言う人もいなかった。

 

知り合いが観たらつまらなくて観てるのが苦痛、

と言う感想もあったりして。。

 

先日友人に会って

文庫本の「ワーニャ伯父さん」が私の手元に来たのだった。

 

 

まあ戯曲なのでト書きもあるし、

登場人物の名前もロシア名なので覚えにくいしで、

慣れるまではちょっと読みにくい。

 

それでも2日ほどで読み終わり、その感想などを

友人と話したりしていたら。。

 

その翌日にアマプラで今無料配信中なのを発見。

 

早速観てみました。

何というか凄いタイミング。

 

耄碌してきたとは言え、

48時間以内に読んだばかりなので、

まだキッチリ覚えている台詞が

映画の中で声となって話されている!

 

何というか平面的なものが急に立ち上がって

立体化されたような不思議な感覚。

 

長い映画だけれど、飽きずに興味深く面白く

観ることが出来た。

 

 

 

カメラワークというか

ドライブのシーンが多いのも良かった。

 

車のフロントガラスから見える道と風景、

リアウィンドウからの道路の様子、

ドローンで撮った高い位置からの道路を走る車の様子が

長い時間写される。

 

私はそもそも流れる風景というものが大好きなので

美しいその映像を眺めているだけでも、

かなりの満足感がある。

 

内容については 

主人公家福とそのドライバーみさきの抱える苦しみ、

思いがけず家族を失って、

その時の罪悪感もあり後悔もあり、

その苦しみを抱えながらも生きていかなくてはならない、

というモチーフが、

ワーニャ伯父さんの中のワーニャ伯父さんと

姪のソーニャの苦しみと諦観に重なるような映画だ。

 

友人は(介護鬱から復活した友人)

やはり最愛のご両親を看取り

酷く疲れて生きる希望を失っていたけれど、

その苦しみの中から、

時間はかかったがやっと元気を取り戻した所なので、

ソーニャの最後の台詞が自分の心の声のように、

自分の気持ちを代弁してくれたように感じて

大感激大共感したのだろう。

 

私も勿論常にどんな苦しいことがあっても

生き続けなくてはならない・・

と肝に命じているというか、長年意識しているし

それが宿命だとも感じている。

 

だがもう私は感情が鈍麻していて

私の心は永久凍土のような状態なので、

その台詞を聞いても

感動出来たりすることは無い。

残念。。

 

そういえば私が高校の頃は、

新劇が流行っていたと記憶している。

 

当時新劇とは時代をリードしたり

世の中に刺激や疑問を投げかけたり、

インテリの人達によるカッコ良い劇とされていた。

 

私も全く分からないなりに

文学座の「欲望という名の電車」とか観にいったものだ。

 

内容はハッキリ言って全く分からなかった。

まあ二十歳そこそこの娘には無理も無いが。

 

まあ生の杉村春子さんと北村和夫さんを観たという感じ。

何か歳に無理があるような印象は否めなかった。

(スミマセン。。)

 

その後ヴィヴィアン・リーの映画版を観て、

その時も良く分からず。。

 

中年になってから又見直して、

さすがにかなり分かったように感じた。

 

高校時代の友人の中には、

大学を中退して劇団に入った人もいて

入団後7.8年経った頃に、

やっと大きな役が貰えたと連絡が来て

仲間で意気込んで観に行ったが、

それも思えばチェーホフの「三人姉妹」だった。。

 

「ドライブマイカー」を観たことがきっかけとなり

昔の新劇舞台的なものを色々思い出すことになった。

ちょっと懐かしい。

 

この映画の感想としては。

 

広島に舞台が移ってからはかなり面白くなったが、

前半のまだ妻が生きているころのシーンは

真実味が無いというか胡散臭い感じがしたかな。

 

妻の役者さんはもう少し違った感じの女優さんに

した方が良かったかも。

 

家福と妻音の関係性が凄く密で濃い・・という

設定になっているが、

どうもそんな風には感じられなかった。

性的シーンはもっと少ない方が良かったと思うが。

 

洋風の生活様式も、

スタイリッシュにしたかったのか分からないが、 

何か無理がある感じで嘘っぽい。

 

ドライバー役の三浦透子さんは存在感があって

出てくると画面も引き締まって良かった。

 

劇中劇でのキャストのアジアの人達も良かったと思う。

ラストの手話の演技も引き込まれる。

 

観たタイミングも合って中々面白い映画でした。

 

この映画が世界で評価されたというのは

映画人や映画業界の人達にとって

チェーホフの作品がよく知られているというか

そもそも知識の下地があるから、

内容の理解がスムースなのかもしれないと思った。

 

勿論「ワーニャ伯父さん」を全然知らずに

ドライブマイカーの作品だけで評価した人達もいたとは

思うが。。

 

何というか業界人好みというか

演劇人や玄人好みな感じはします。