続き。
この小説はそういう祖先をもつ2008年当時の中国人の子孫
の復讐の物語といえる。
かつては、
欧米に搾取されてきた民族である中国が、
21世紀に入り、今度は経済的征服者として
アフリカに手を伸ばそうとしている。
二人のヒロイン、現代のスウェーデンの裁判官であるビルギッタと
中国共産党の準幹部ホンクィを中心に話は展開していく。
設定は2008年で、まだ習近平政権になっていない
状況が描かれている。
今はさらに中国は実力を持つ世界第二の大国と
なって、アメリカと覇権を争っている.。
2008年といえば10年前で、
それほど前ではないのに、かなり現在との違いも感じる。
マンケルは南アフリカ共和国とスウェーデンを
行ったり来たりしていたらしいが、
やはりアフリカに対する思い入れが感じられた。
そしてちょっと意外だったのは
中国の文化大革命の時代、スウェーデンでは
かなりその評価が高くて、毛沢東の支持者が多数だったことだ。
裁判官ビルギッタの回想シーンでも
自身の青春時代の象徴として
文化大革命を良いイメージで考えている描写が
多い。
ビルギッタが旅行で北京を訪れるシーンでは
そのあまりにも無防備な姿勢に、
隣国日本人の私などは、ちょっと驚き
ハラハラしてしまった事だった。
ホンクィの祖国中国への思い、
良き共産主義国であり続けるために
行動を起こす・・という描写があるが、
その辺がマンケルの(ちょっと理想主義者的?な)
中国への寛大さからのもののようだ。
マンケルは白人支配を憎み
人種差別や偏見を憎んだ人だったらしいが
それがよく感じられる作品だったと思う。
世界的視野で書かれた、
読み応えのある骨太で社会性のある作品だった。