青山文平「泳ぐ者」
新潮文庫2023年10月 発行解説・木内昇366頁離縁して三年半もたつのに、なぜ元妻は元夫を刺したのか事件の「なぜ」を追う徒目付、片岡直人は真相を確信しますが、最悪の事態を招いてしまいますそんな折、奇妙な噂が耳に入ります毎日決まった時刻に、大川を泳ぐ男がいるという……違和感の向こうに見えてくる謎めいた人生と、口に出せぬ過去闇を抱えて生き抜いてきた男と女が、最期にみせた真実とはざらついた心を隠しながら、穏便に日々を過ごしてきた人間の心の翳を描き、「時代小説」の枠をこえた傑作神田多町の居酒屋、主人公・片岡直人と徒目付の上役、内藤雅之とが猪口を傾け合っての対話から始まります4ヶ月、江戸を不在にしていた雅之は、対馬へ、そして長崎へ19世紀初頭、日本に押し寄せる海外からの侵略と国防について語り合う2人直人が、日本は武威の国だか ら異国はその強さに恐れをなして攻めかかることができない、と教え込まれてきたという件には驚きましたこの考えが明治、大正、昭和と引き継がれ神国ニッポンとなっていったのでしょうかまるで洗脳です恐ろしいものです「半席」の続編とのことが、このような話題とどう繋がるのか、疑問に思いつつ読み進めるとようやく雅之不在の間に直人が関わった「なぜ」が語られます人間の持つ心の闇について「なぜ」を繰り返す直人現代であれば、かなり優秀な刑事さんといったところですね息詰まるようなサスペンスに江戸時代の人々のリアルな心情を見事に描き切っています軽めの時代小説を期待するとキツイかも心して読んでいただきたいと思います