高齢化に伴う支出増に伴い、先進国は国債の継続発行が困難に

(2010年10月12日、東京=S&P) スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」)は、「逆行できない真実:2010年 高齢化について」と題するリポートを発表した。このなかで、先進主要国の国債負担は、高齢化に伴う長期的な歳出傾向に対して、何らかの斬新な対策を取らなければ、40年後にはGDPの300%に達し、持続不可能なレベルに達するだろうという見解を示した。本リポートはS&Pが2007年に発表した、世界49カ国、世界人口の3分の2以上を対象とした、人口構造の変化が公的部門の資金調達に及ぼす影響についての調査内容を更新したものである。
S&Pは、人口高齢化は世界各国の経済成長見通しに深刻な影響を与え、高齢化対策の増加により歳入に多大な影響を与えるとみている。適切な歳入関連の調整、将来の年金、健康保険システムの一層の改革、もしくは国の潜在成長力を向上させる抜本的な施策なくしては、各国政府、欧州連合、OECD(経済協力開発機構)、IMF(国際通貨基金)などの見通しをベースにしたS&Pの推計によると、調査対象とした国のなかで、大多数の国の債務負担は、史上前例のない水準まで増加するものと思われる。
「世界人口の高齢化の進展以上に、経済の健全性、公的ファイナンス、国家の方針など、国の将来のあり方に関して、影響を及ぼす要因はないだろう。現在から2050年にかけて、公的ファイナンスの悪化は、先進国で顕著である一方、欧州圏外の新興国での深刻度は若干軽い。というのも、新興国の場合、先進国よりも比較的高い経済成長を背景にして、高齢化問題が生じているからである。しかし、新興国においても、経済発展に伴う社会構造の大幅に変化によって、先進国が二十世紀後半にそうであったように、福祉関連支出がGDPを上回るペースで拡大するかもしれない」とS&Pの信用アナリスト、マーコ・ムルズニックは述べている。
政策変更、現状の高齢化に起因した公的支出(およびその利払い負担)が継続するというわれわれの仮説シナリオでは、財政赤字と政府の債務残高は2015年以降、急激に増加する見通しである。本調査では、主に以下のような点が明らかになった。
* 政策に変更がなければ、調査対象となった国の財政赤字の中央値は現在GDP対比5.3%なのに対し、2020年半ばには6%以上(先進主要国では同5.7%が7.4%、新興国では同じく4.7%から3.1%)になる見通し。
* 調査対象国全体の政府の一般純債務残高の中央値は2020年までにGDP比50%に増加しその後も加速して増加。(先進国では同78%、新興国では同38%)。2030年までには、全体の中央値はGDP対比90%(先進国では115%、新興国では60%)にまで増加し、2050年までには245%(先進国では329%、新興国では126%)まで上昇する見通し。
* 政府部門の経済に占める割合は大幅に増加し、現在の44%(先進国46.7%、新興国38.3%)が2050年には60%(先進国68%、新興国46.4%)まで拡大。
本シナリオは、S&Pが想定しているシナリオではない。政府が以上述べたような債務負担の悪化に策を講じないとは考えられない上、市場もこうした債務負担を引き受けることはないだろう。しかしながら、本シナリオは、国が運営する積立不足になっている社会保障の支給額の削減と更なる財政引締めの必要性を明らかにしているといえよう。
2010年代は高齢化問題が公的ファイナンスの持続性にもたらす影響に警鐘を鳴らすいい機会だと考えられていた。政府、特に欧州の先進・新興諸国は、歳出リスクを封じ込めるための改革を積極化させてきた。しかし、金融危機によって、負債管理は中断を余儀なくされた。2007年以降の国債発行額の急激な増加は、特に将来高齢化関連支出の増加が見込まれる諸国において、ソブリンの歳出リスクの封じ込めのための改革の前倒しを迫っている。
ムルズニックは「高齢化関連歳出リスクを抑制するために、多くの国が年金、健康保険制度の改革に着手し始めている。しかしながら、調査が明らかにしている通り、予測された将来の財政負担の規模を考えると、政府は一層の努力が必要とされているとS&Pは考えている」と述べた。