映画007シリーズ全24作品には番外編があって、1967年の『007/カジノロワイヤル』と1983年の『ネバーセイ・ネバーアゲイン』だ。他に1954年にアメリカでテレビドラマ化されているから、ジェームズ・ボンド作品では初の映像化という点では歴史はそこまでさかのぼる。

 
小説の版権、映画化権のややっこしい関係から番外編ができたようだ。われわれがよく知っている第1作『007/ドクター・ノオ』は1962年公開。日本初公開時の邦題は『007は殺しの番号』だった。主演はショーン・コネリー。第5作『007は二度死ぬ』まで主演をつとめ引退。第6作『女王陛下の007』をはさんで第7作『007ダイヤモンドは永遠に』(1971年)で復帰。そして1作で引退。再度復帰した番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は12年ぶりの作品になった。

この『ネバーセイ・ネバーアゲイン』はBDでは販売されているが、テレビでの放送がしばらくなかった。先日数年ぶりに見た。ショーン・コネリーの存在感はさすがだが、なにかしら薄っぺらい感じが全体を覆っている。ストーリーは面白いのだが。そこで気がついたのはあの「ジェームズ・ボンドのテーマ」が、この映画に使われていないということだ。好きな演奏はジョン・バリーセブン楽団のものだが、それがない。そのかわり奇妙な効果音があちこちで使われている。

字幕版と吹き替え版では、絶対字幕版が好きだ。今回の放送はあの若山弦蔵の吹き替え版だった。字幕版のほうは見逃してしまった。このことが印象を軽くしている原因なのだろう。当然のことながら、映画というものは、映像と音の世界で成り立っている。どちらが弱くても映画の出来不出来にもろに現れてしまう。

とりあえず、全24作+番外編からなる『007シリーズ』のコレクションは出来上がった。高校生の時に見た第1作からもう半世紀になる。時代とともに映画の作り方は変わるが、娯楽作品として手の込んだ作りをした作品はいつ見ても楽しい。普遍性がある。それは向日葵畑を背景に流れる『ひまわり』のテーマ曲を聞くと自然に泣けてくるように。