友達と過ごす楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。

たまには別々の時間を持った方がいいとあなたが言うから、
僕もこういうときは素直に自分の時間を過ごすことにする。
ちょうど新しい仕事も始まったところだし、いつものメンバーで集まって
ゲームをしたりワインを飲んだり、久しぶりに楽しく過ごした。

きっとあなただって今のうちに会っておきたい友達がたくさんいるだろうから、
そこに僕はいなくてもいいんだろう。
いつもたくさんの友達に囲まれているあなたは
僕といるときとはちょっと違う人。

この間だって…なんだよ、あの写真。
あの人が特別なのはずっと前からだって知ってるけどなんか面白くない。
妬いてると思われるのは癪だから気にしてないふりをする。

離れていてもメールや電話をするのは僕の方。
気に入らないけどいつも通りにしないと気づかれてしますから、
素っ気なくならないように気をつけながらあなたにメール

(ヒョン、今日はどうしてる?)

(何も)

あなたの方がいつも素っ気ない。
昔は絵文字とかハマってたくせに。
人の気も知らないでなんだよ。

(何もってなに?)

(今日は予定入れてない)

(出かけないの?)

(決めてない)

(出かけたくないの?)

(どうしようかな)

なんかはぐらかされてる気がして気分が悪い。

(出かけたくないなら家にいれば?)

(なんだよ、怒ったのか?)

(怒ってない)

(冷たいな)

(なにそれ)

(お前こそ)

(なんだよ)

(約束あるんだろ?)

(今日はしてない)

(予定は?)

(入れてない)

(何も?)

(何も)

(冷たいな)

(なんでそうなるんだよ)

(来ないつもりか?)

(どこに?)

(俺んち)

(なんで?)

(わからないならいいよ)

(わかった)

(なにが?)

(ヒョン暇なんだろ?)

(忙しいよ)

(予定ないんじゃん)

(時間はないよ)

(じゃあ、なんで?)

(面倒だから家来てからな)

(ちょっと、ヒョン)

(…)

(ヒョンってば)

(…)

(無視するな)

(来いって言った)

(…わかったよ)

ヒョンはたまに面倒だ。
電話にすればすぐすむのに、
なにムキになってメールしてるんだか。

今日は予定入れてないのに時間がないってなんだろう
それなのに来いなんて勝手だな。
それで行っちゃう僕も僕だ。
しかたない、逢いたいんだから。
友達とどんなに楽しい時を過ごしたって、
あなたとの時間とは全く別物で、
僕はいつだってあなたといたいんだ。

なんだか負けてるようでちょっと悔しいけど、
どうせならヒョンの好きな料理を作って2人でゆっくりしよう。
今日は何を作ろうか…あれ?もしかしてヒョン…。

簡単に作れるものをいくつか買ってあなたの部屋を訪ねる。

「いらっしゃい」

にこやかに迎えるあなたは相変わらずカッコよくて
ちょっとムカつくくらい。

「別に、今日は暇だったんで…ヒョン一人でかわいそうだし」

「ふうん。いろいろ買ってきてくれたんだな。俺も用意したよ」

「え?」

テーブルを見ると、僕の好きなピザやチキンがすでに用意されている。
そして、カクテルグラスにはオレンジジュース?
昼間だからジュースなのか?

あなたを振り返ると、ちょっといたずらっぽい目をしてる。

「飲んでみろよ」

「ヒョンは?」

「一緒に飲もう」

軽くグラスを合わせて口に含むと、甘酸っぱい中にほんのり苦味を感じた。

「どう?ビターオレンジ」

「これってビール?」

「そうだけど。お前、まだわからないの?」

「え?」

あなたは僕のグラスを取り上げるとそっと腰を抱き寄せ、
耳元で囁く。

「今日はオレンジデーだろ?」

「あ…」

「お前以外に時間使う気ないから」

得意気に言うと、あなたは僕の唇を塞いだ。


(画像はお借りしました)