深夜に見上げた空は晴れ渡り、星まで出ている。
どうやら今夜は晴れのようだ。
七夕と言えば雨降りなのに、今どきのカップルのようにあっけらかんとしているのか
情緒がない。
窓の外を眺めながら思わずため息が出る。
「今夜は晴れかな」
台本を読んでいたあなたがふと顔をあげてつぶやいた。
「チルソクといえば雨ですけどね」
「韓国では雨だな。日本では違うらしいけど」
「そうですねぇ、チルソクといえば1年ぶりの逢瀬を喜ぶ涙雨ですけど、
日本の七夕は雨だと2人は会えないらしいから気の毒ですね」
「1日雨なら1年ぶりに逢えた喜びの涙で2日間雨ならまた別れるのを惜しむ涙だっけ」
「今年は晴れそうですから能天気な逢瀬になりそうですね」
「うれし涙はきれいだけど、俺は笑っていてほしいな」
いつの間にかヒョンが隣に来て僕を見つめている。
「ヒョン?」
「俺の好みの話。愛する人にはどんなときでも笑っていてほしい」
「離れ離れになってしまうのに?」
「離れ離れになってもだよ。必ずまた逢えるだろ?」
「離れているのはつらいです。笑っていられるかな」
「俺が笑ってほしいと思っていることをわかってくれてればそれでいいんだ」
離れてもいいと言われてるみたいでなんだか切なくなってしまう。
ヒョンと離れ離れなんて考えたら…
僕だったら笑っていられないと思う。
「泣いてもいいの?」
「俺のいないところで泣かないでほしい」
背中がふわっと温かくなって僕はあなたの腕の中にいた。
この温もりが年に1度しか感じられないなんて、僕には無理だ。
「1年に1度しか逢えないのに?」
「俺が涙を吸って笑顔にしてやるから、最後に笑顔になってくれればそれでいい」
「ヒョンは勝手だ」
「わかってる。それでもお前には笑っていてほしいよ、チャンミナ」
「僕たちの話じゃないでしょ」
「同じだよ。もうすぐその日が来るだろ」
「ヤダ。その話なら聞かないから」
ほら、やっぱり。
あなただってその日を意識しているんだ。
そんな話なら聞きたくないから僕はあなたの腕をほどいてキッチンへ行く。
「チャンミナ…」
気持ちが落ち込んだときはおいしいものを食べるに限る。
どうせなら七夕に食べるものを作ってみようか。
「そんなことよりミルクッスでも作ってみましょうか」
「いいよ、素麺で。こねるの大変だろ。お前作ったことあるの?」
「まさか。ヒョンの家ではいつも手作りでした?」
「どうだったかな。ミルジョンビョンは手作りだと思うけど」
ミルクッスもミルジョンビョンも要するに小麦粉をこねればできるはずだ。
ただ、ミルジョンビョンは中に巻くおかずも作らなければいけないから
少し時間がかかり過ぎる。
さすがに主婦でもないのにそこまで常備菜を作り置きしていない。
「ミルジョンビョンかぁ…チヂミでいいですか?」
「いいよ、作らないで。俺まだ食事制限してるから」
「じゃあ素麺だけ。行事食は大事ですよ」
「お前マメだね」
「さすがに鯉はないですよ。雰囲気だけ」
「十分だよ。そういえば昔日本で短冊を書いたな」
「そうでしたね。まだ日本語がうまくできない頃でしたけど」
「笹買ってくればよかったな」
ヒョンのイベント好きは今に始まったことではないけれど、
今までしてなかったのに急に何を言い出すんだか。
「今からですか?里芋の葉っぱもないですよ」
「さすがにマンションで里芋は作れないだろ。マジックで書けばいいじゃん」
「願い事でもあるんですか?」
「あるよ。お前も知ってるだろ?」
短冊に願い事を書きたいとか、あなたにはたまに乙女チックなところがあるから
ちょっとからかいたくなる。
「うーん、ヒョンが食事制限頑張ってドラマが成功するように?」
「お前…そうじゃないだろ」
「僕はおいしいものを死ぬほど食べられますようにでいいです」
「それじゃあ昔と変わらないだろ」
「僕はいつでもブレないんですよ」
「俺もずっと変わらないよ」
そう言ってあなたはまた僕を抱きしめる。
「ヒョン?」
「いつまでもずっとお前と2人で笑って歩いていければそれでいい」
「いつまでも?」
「そう約束したろ?」
「呼吸をする限り」
「うん」
「僕たちはずっと2人で歩いていくんですね」
「永遠に、だろ?お前が言ったんだよ」
「そうでしたっけ」
あなたが何も言わずに思っている事を口に出しただけだ。
あなたが僕だけを未来に連れていくと言ったから、
僕とあなたは永遠に一緒なんだ。
こんなキッチンでなんだか恥ずかしくて、目をそらすと、
あなたの指が僕の頬を撫で、唇が重ねられる。
軽く啄ばむようなキスで照れてるぼくをからかう。
こういうときは年上ぶる(本当に年上だけど)あなたに、
唇をぶつけるようにキスをして上目遣いで軽く睨むと、
あなたが優しく微笑んで僕の腰を抱き寄せる。
今度はしっとりと唇を重ねられ、僕は軽く口を開いてあなたの舌を待つ。
あなたの首に腕をまわして抱き寄せれば、あなたはそのまま僕を抱き上げ、
ベッドに運んだ。
「なあ」
「はい?」
「今夜も来いよ?」
「今いるじゃないですか」
「そうじゃなくて、明日の今夜」
「ヒョンも僕も仕事ですけど」
「終わってから」
「どうして?」
「七夕だから」
「今もでしょ?それに今夜は日付変わる前に帰れるかな」
「それでもいいから。一緒にまた夜空をみながら素麺食べよう」
「なるほど。それで今はおあずけなんですね?」
「ばか、集中しろよ」
「途中で腹が鳴っても怒らないでくださいよ?」
「お前の腹が鳴ってもやめないから」
「しかたないですねぇ。明日はミルクッスとミルジョンビョン食べさせてくださいよ」
「わかったから、もうだまれよ」
「ヒョン?」
「うん?」
「僕はヒョンとずっとこうしてたい」
「俺もだよ。チャンミナ、ずっとだ」
「はい」
僕は目を閉じると、あなたで満たされる瞬間を待つ。
僕たちは24時間七夕で、ずっと一緒にいられればいい。
たとえ1日でも離れていたくない。
そして考えたくないその日だって、離れたくないけれど
また逢えることがわかっているから待てるのだ。
寂しいと泣くよりも、次に逢える日を思って笑顔でいよう。
それがあなたの望みなら…。
終
【ゆのみん企画第70回:七夕】参加のみなさまはこちら↓
http://yunomin.seesaa.net/article/401163769.html
お話を書くためにソウルのお天気を調べましたww
韓国では七夕(チルソク)といえば雨のようですが、今夜は晴れのようですね。
明日は雨かもしれないので、やっぱり別れは寂しいということですかね。
素麺といえば、ユノ…σ(^_^;)
ビビン素麺を思い出します。
今年はチャンミンに「ヒョンの心をつかむ料理」を伝授してほしいですねp(^-^)q
(画像はお借りしました)
7月のカレンダー、最高です。
エイベもたまにはいい仕事しますね←
というか、公式のカレンダーはお高いけど昨年からのこのスケブ仕様のものが最高に気に入ってます。
これ、枕元の棚に立てかけて置けるのでナイスなんです。
卓上はPCの横にいつも置いてます。
古いものも大事にとっておけますし、いいですよね。
そしてグッズはたまっていくのです…いい加減片付けないと離縁されそうです。(-_-;)
どうやら今夜は晴れのようだ。
七夕と言えば雨降りなのに、今どきのカップルのようにあっけらかんとしているのか
情緒がない。
窓の外を眺めながら思わずため息が出る。
「今夜は晴れかな」
台本を読んでいたあなたがふと顔をあげてつぶやいた。
「チルソクといえば雨ですけどね」
「韓国では雨だな。日本では違うらしいけど」
「そうですねぇ、チルソクといえば1年ぶりの逢瀬を喜ぶ涙雨ですけど、
日本の七夕は雨だと2人は会えないらしいから気の毒ですね」
「1日雨なら1年ぶりに逢えた喜びの涙で2日間雨ならまた別れるのを惜しむ涙だっけ」
「今年は晴れそうですから能天気な逢瀬になりそうですね」
「うれし涙はきれいだけど、俺は笑っていてほしいな」
いつの間にかヒョンが隣に来て僕を見つめている。
「ヒョン?」
「俺の好みの話。愛する人にはどんなときでも笑っていてほしい」
「離れ離れになってしまうのに?」
「離れ離れになってもだよ。必ずまた逢えるだろ?」
「離れているのはつらいです。笑っていられるかな」
「俺が笑ってほしいと思っていることをわかってくれてればそれでいいんだ」
離れてもいいと言われてるみたいでなんだか切なくなってしまう。
ヒョンと離れ離れなんて考えたら…
僕だったら笑っていられないと思う。
「泣いてもいいの?」
「俺のいないところで泣かないでほしい」
背中がふわっと温かくなって僕はあなたの腕の中にいた。
この温もりが年に1度しか感じられないなんて、僕には無理だ。
「1年に1度しか逢えないのに?」
「俺が涙を吸って笑顔にしてやるから、最後に笑顔になってくれればそれでいい」
「ヒョンは勝手だ」
「わかってる。それでもお前には笑っていてほしいよ、チャンミナ」
「僕たちの話じゃないでしょ」
「同じだよ。もうすぐその日が来るだろ」
「ヤダ。その話なら聞かないから」
ほら、やっぱり。
あなただってその日を意識しているんだ。
そんな話なら聞きたくないから僕はあなたの腕をほどいてキッチンへ行く。
「チャンミナ…」
気持ちが落ち込んだときはおいしいものを食べるに限る。
どうせなら七夕に食べるものを作ってみようか。
「そんなことよりミルクッスでも作ってみましょうか」
「いいよ、素麺で。こねるの大変だろ。お前作ったことあるの?」
「まさか。ヒョンの家ではいつも手作りでした?」
「どうだったかな。ミルジョンビョンは手作りだと思うけど」
ミルクッスもミルジョンビョンも要するに小麦粉をこねればできるはずだ。
ただ、ミルジョンビョンは中に巻くおかずも作らなければいけないから
少し時間がかかり過ぎる。
さすがに主婦でもないのにそこまで常備菜を作り置きしていない。
「ミルジョンビョンかぁ…チヂミでいいですか?」
「いいよ、作らないで。俺まだ食事制限してるから」
「じゃあ素麺だけ。行事食は大事ですよ」
「お前マメだね」
「さすがに鯉はないですよ。雰囲気だけ」
「十分だよ。そういえば昔日本で短冊を書いたな」
「そうでしたね。まだ日本語がうまくできない頃でしたけど」
「笹買ってくればよかったな」
ヒョンのイベント好きは今に始まったことではないけれど、
今までしてなかったのに急に何を言い出すんだか。
「今からですか?里芋の葉っぱもないですよ」
「さすがにマンションで里芋は作れないだろ。マジックで書けばいいじゃん」
「願い事でもあるんですか?」
「あるよ。お前も知ってるだろ?」
短冊に願い事を書きたいとか、あなたにはたまに乙女チックなところがあるから
ちょっとからかいたくなる。
「うーん、ヒョンが食事制限頑張ってドラマが成功するように?」
「お前…そうじゃないだろ」
「僕はおいしいものを死ぬほど食べられますようにでいいです」
「それじゃあ昔と変わらないだろ」
「僕はいつでもブレないんですよ」
「俺もずっと変わらないよ」
そう言ってあなたはまた僕を抱きしめる。
「ヒョン?」
「いつまでもずっとお前と2人で笑って歩いていければそれでいい」
「いつまでも?」
「そう約束したろ?」
「呼吸をする限り」
「うん」
「僕たちはずっと2人で歩いていくんですね」
「永遠に、だろ?お前が言ったんだよ」
「そうでしたっけ」
あなたが何も言わずに思っている事を口に出しただけだ。
あなたが僕だけを未来に連れていくと言ったから、
僕とあなたは永遠に一緒なんだ。
こんなキッチンでなんだか恥ずかしくて、目をそらすと、
あなたの指が僕の頬を撫で、唇が重ねられる。
軽く啄ばむようなキスで照れてるぼくをからかう。
こういうときは年上ぶる(本当に年上だけど)あなたに、
唇をぶつけるようにキスをして上目遣いで軽く睨むと、
あなたが優しく微笑んで僕の腰を抱き寄せる。
今度はしっとりと唇を重ねられ、僕は軽く口を開いてあなたの舌を待つ。
あなたの首に腕をまわして抱き寄せれば、あなたはそのまま僕を抱き上げ、
ベッドに運んだ。
「なあ」
「はい?」
「今夜も来いよ?」
「今いるじゃないですか」
「そうじゃなくて、明日の今夜」
「ヒョンも僕も仕事ですけど」
「終わってから」
「どうして?」
「七夕だから」
「今もでしょ?それに今夜は日付変わる前に帰れるかな」
「それでもいいから。一緒にまた夜空をみながら素麺食べよう」
「なるほど。それで今はおあずけなんですね?」
「ばか、集中しろよ」
「途中で腹が鳴っても怒らないでくださいよ?」
「お前の腹が鳴ってもやめないから」
「しかたないですねぇ。明日はミルクッスとミルジョンビョン食べさせてくださいよ」
「わかったから、もうだまれよ」
「ヒョン?」
「うん?」
「僕はヒョンとずっとこうしてたい」
「俺もだよ。チャンミナ、ずっとだ」
「はい」
僕は目を閉じると、あなたで満たされる瞬間を待つ。
僕たちは24時間七夕で、ずっと一緒にいられればいい。
たとえ1日でも離れていたくない。
そして考えたくないその日だって、離れたくないけれど
また逢えることがわかっているから待てるのだ。
寂しいと泣くよりも、次に逢える日を思って笑顔でいよう。
それがあなたの望みなら…。
終
【ゆのみん企画第70回:七夕】参加のみなさまはこちら↓
http://yunomin.seesaa.net/article/401163769.html
お話を書くためにソウルのお天気を調べましたww
韓国では七夕(チルソク)といえば雨のようですが、今夜は晴れのようですね。
明日は雨かもしれないので、やっぱり別れは寂しいということですかね。
素麺といえば、ユノ…σ(^_^;)
ビビン素麺を思い出します。
今年はチャンミンに「ヒョンの心をつかむ料理」を伝授してほしいですねp(^-^)q
(画像はお借りしました)
7月のカレンダー、最高です。
エイベもたまにはいい仕事しますね←
というか、公式のカレンダーはお高いけど昨年からのこのスケブ仕様のものが最高に気に入ってます。
これ、枕元の棚に立てかけて置けるのでナイスなんです。
卓上はPCの横にいつも置いてます。
古いものも大事にとっておけますし、いいですよね。
そしてグッズはたまっていくのです…いい加減片付けないと離縁されそうです。(-_-;)