練習生としての日々はなかなかハードだった。
学校から帰るとすぐに事務所に行き、レッスンを受ける。
それまでの僕は特に芸能界にあこがれていた訳でもなく、なんの訓練もしていなかったから、
発声から始まるボイストレーニングとダンスのレッスンについていくのはかなりキツかった。
歌を歌うのは好きだったけれど、本格的に習ったことはなかったけれど、
先生に言われる通りに腹筋を使って喉を開いて声を出すと自分でも驚くほど声が出た。
自分の体を楽器とみなして声を出すということがとても新鮮で、
音域が広がる楽しさと、音程をきっちり取る難しさを感じながらも
思ったよりも自分に会っているのかもしれないと思えた。
問題はダンスだった。
運動神経はそんなに悪くないつもりだったけれど、
体育の授業で体を動かすのとは全く違ってうまく動きについていけない。
集団のダンスレッスンではいつも僕はみんなと動きが合わない。
なんとか少しでも追いつきたくてレッスンが終わってからも
最終のバスの時間ギリギリまで残ってその日に習ったステップを練習した。
ある日、レッスン室に行くと、トレーナーが何人かのレッスン生と話をしていた。
きっとこの中から何人かがユニットを組んでデビューするんだろう。
僕にはまだ夢のまた夢、まずはここの集団についていけるようにならなくては。
その日のレッスンが終わると僕はトレーナーに残るように言われた。
叱られるのだろうかと少し不安になりながら待っていると、
そこにトレーナーと一緒にあなたがやってきた。
あの日以来、すれ違いで言葉を交わすことはなかったけれど、
僕はちょっと緊張する。今度こそちゃんと目をみて話さないといけない。
「チャンミン、ユンホは知ってるな」
「はい」
「じゃあ、ユンホそういうことで頼むな」
「はい。わかりました」
「あの、先生、どういうことでしょうか」
「ああ、お前ダンスはしばらくこいつに個人レッスンしてもらえ。
今のままじゃみんなについてこれないだろ」
「…はい、わかりました」
「じゃあ、早速今からだ。期限は2週間。その結果次第でお前のクラスを決めるから」
「先生、2週間でどこまで仕上げればいいですか?」
「それはユンホ、お前にまかせるよ。このクラスに残れる程度でもそれ以上でも、お前の見立てでいい」
「わかりました。じゃあ、チャンミン、ストレッチからな」
「あの…」
「うん?」
「先輩、お時間いただいてありがとうございます。ご指導よろしくお願いします」
ちょっと緊張したけど、頑張って目を見て挨拶をする。
最初が肝心だ。
すると、あなたは一瞬目を見開いて、すぐに厳しい先輩の顔に戻る。
「よし、時間がもったいないからすぐ始めるぞ。期限つきだからな」
「はい、お願いします」
もう僕は目をそらさない。
あなたを見つめて、あなたについていけばきっと大丈夫、
この2週間でどうなるかわからないけれど、やるしかないんだ。
こうして僕はあなたに手をひかれるようにして、この道を歩き始めた。
to be continued ...
学校から帰るとすぐに事務所に行き、レッスンを受ける。
それまでの僕は特に芸能界にあこがれていた訳でもなく、なんの訓練もしていなかったから、
発声から始まるボイストレーニングとダンスのレッスンについていくのはかなりキツかった。
歌を歌うのは好きだったけれど、本格的に習ったことはなかったけれど、
先生に言われる通りに腹筋を使って喉を開いて声を出すと自分でも驚くほど声が出た。
自分の体を楽器とみなして声を出すということがとても新鮮で、
音域が広がる楽しさと、音程をきっちり取る難しさを感じながらも
思ったよりも自分に会っているのかもしれないと思えた。
問題はダンスだった。
運動神経はそんなに悪くないつもりだったけれど、
体育の授業で体を動かすのとは全く違ってうまく動きについていけない。
集団のダンスレッスンではいつも僕はみんなと動きが合わない。
なんとか少しでも追いつきたくてレッスンが終わってからも
最終のバスの時間ギリギリまで残ってその日に習ったステップを練習した。
ある日、レッスン室に行くと、トレーナーが何人かのレッスン生と話をしていた。
きっとこの中から何人かがユニットを組んでデビューするんだろう。
僕にはまだ夢のまた夢、まずはここの集団についていけるようにならなくては。
その日のレッスンが終わると僕はトレーナーに残るように言われた。
叱られるのだろうかと少し不安になりながら待っていると、
そこにトレーナーと一緒にあなたがやってきた。
あの日以来、すれ違いで言葉を交わすことはなかったけれど、
僕はちょっと緊張する。今度こそちゃんと目をみて話さないといけない。
「チャンミン、ユンホは知ってるな」
「はい」
「じゃあ、ユンホそういうことで頼むな」
「はい。わかりました」
「あの、先生、どういうことでしょうか」
「ああ、お前ダンスはしばらくこいつに個人レッスンしてもらえ。
今のままじゃみんなについてこれないだろ」
「…はい、わかりました」
「じゃあ、早速今からだ。期限は2週間。その結果次第でお前のクラスを決めるから」
「先生、2週間でどこまで仕上げればいいですか?」
「それはユンホ、お前にまかせるよ。このクラスに残れる程度でもそれ以上でも、お前の見立てでいい」
「わかりました。じゃあ、チャンミン、ストレッチからな」
「あの…」
「うん?」
「先輩、お時間いただいてありがとうございます。ご指導よろしくお願いします」
ちょっと緊張したけど、頑張って目を見て挨拶をする。
最初が肝心だ。
すると、あなたは一瞬目を見開いて、すぐに厳しい先輩の顔に戻る。
「よし、時間がもったいないからすぐ始めるぞ。期限つきだからな」
「はい、お願いします」
もう僕は目をそらさない。
あなたを見つめて、あなたについていけばきっと大丈夫、
この2週間でどうなるかわからないけれど、やるしかないんだ。
こうして僕はあなたに手をひかれるようにして、この道を歩き始めた。
to be continued ...