初めて会ったとき、その瞳に惹かれたのかもしれない。

大人しそうなお坊ちゃんという印象だったが、
その大きな瞳は決して弱弱しくはない、強い光を放っていた。

まだ幼い、とはいってもそういう年齢の子はたくさんいる。
うつむきがちで自分を主張するでもないその様子に
この世界ではやっていけないのではと思った。
だから親切のつもりであんな言葉を投げかけたんだ。

いや、少し違うな。
まっすぐ俺を見ないその瞳に焦れたのかもしれない。

どうして俺を見ない?
ただこちらを向かせたかっただけだった。

それなのにお前は悲しそうに唇をかみしめ、完全に俺から視線を外す。
そのつぶらな瞳には涙が浮かび、今にもこぼれてきそうだった。
まるで弱いものいじめでもしているような落ち着かない気分になって
俺も興味のないふりでお前から視線をはずす。

初対面でこれでは最悪の印象だな。
でも、これがこの世界だ。
お前が噂の通りなら、甘い気持ちではすぐに壁にぶつかる。
そうやってやめていったやつを何人も見てきた。
ここにいるやつらはお前だけじゃなく全員がダイヤの原石だ。
磨かれなければ輝くことはできない。

みんなが家族でみんながライバルだ。
そんな世界で生きていく覚悟ができるか。
並大抵の努力では上に行くことはできない。
スタートラインはみな同じではないけれど、
お前がここにいるということはいつか同じラインに立てる可能性があるということだ。

あとはお前が選ぶんだ。

この道を選んでいつか一緒に歩いて行くか、
ここで引き返して二度と会わないか。

そしてお前がこの道を選ぶなら、俺がお前を守ってやる。
なぜか、このときそう思った。


to be continued ...


(画僧はお借りしました)