あなたが解離性の記憶障害?…馴染みのない言葉に僕は激しく動揺した。



「それはどういうことですか?」



「先ほどお話したように怪我自体はそれほど重篤ではありません」


「だったら何が問題なんですか?どうしてヒョンはあんなこと…まるで昔に戻ったみたいな」


「そこです。人間の記憶がパズルのようにひとつひとつのピースからなる絵だとしたら、

彼の頭の中はそのピースがいくつか欠落したり、ちゃんとした位置に置かれていない状態です。

解離性というのは、原因は精神的なものと考えられているんです」


「精神的な、ですか」


「強いストレスですね。ずっと悩んでいたり、深く落ち込んでいたりしませんでしたか?」


「悩みは…いつもありますが、落ち込むよりは努力で乗り越えてなんとかしてしまう人です」


「彼に一番近い人はあなたですか?」


「たぶん、家族以外ではそうだと思います。もう10年以上一緒にいますから」


「彼があなたに悩みを打ち明けたり弱音を吐くことはないということですか」


「何が…おっしゃりたいのかわかりません」


「10年以上他人と一緒にいて弱音ひとつ吐けない状態だったのなら…」


「僕が原因だと?」


「いいえ。そうとは言っていません。どうか落ち着いて」


「これが落ち着いていられますか?記憶障害なんですよね?

仕事はおろか日常生活にだって支障がでるかもしれないのに」


「彼のストレスの原因となるものをできるだけ排除して療養しなければ

将来深刻な事態にならないとも限りません。仕事も様子をみないと何とも…」


「仕事を休ませて僕に離れていろと?こんな状態のヒョンを1人にはできません」


「ですから、あせらずにゆっくりと接してあげてください。

それができないならそばにいないほうがいいかもしれません」



これはなんの冗談なのだろう。

僕とあなたを引き裂けるものなど何もないと思っていた。

僕たちがこの道を進む限り、ずっと一緒にいられると思っていたのに、

ヒョン、僕があなたを追い詰めたというの?


あなたはいつだって僕にとってはヒョンで、ずっとその背中についてきた。

最近は少しはあなたを支えることができるようになったと思っていた。


いつもあなたが僕に向ける笑顔には少しの嘘もないと思っていたのに、


「チャンミナ、ありがとう」


あなたのその言葉がいつも僕に勇気をくれたのに、

それはあなたの気遣いだったの?

愛されていると…信じていたのに。


僕はあなたにどんな顔をして会ったらいいのかわからず、一人で病院を後にした。



to be continued ...



(画像はお借りしています)