白い月明かりの下、狭い車の中であなたと愛し合う。
僕からあなたを強く求めることはそう多くはないけれど、
どうすればあなたが夢中になるかはよくわかっている。
あなたの首に腕をまわし抱きよせながら、吐息だけでその愛しい名前を呼ぶ。
こういう呼び方はベッドでしかしないから、それだけであなたにはわかるはず。
今すぐ抱いてほしい…。
合わせた唇の隙間から舌をさぐると、すぐに応えてくれる。
舌を絡ませながら片膝であなた自身を刺激する。
手探りでレバーを引きシートを倒すと、懐かしい重みとともに体が重なる。
上目遣いで見つめながらあなたを呼べば、すぐにあなたの瞳の奥に欲望が宿る。
バタンとドアを閉めると、僕の上に覆いかぶさってきた。
本当に家まで待てなかったわけじゃない。
キスもしないで僕をシートに押し込んだあなたにちょっと我儘を言って困らせようと思った。
だけど、いつも座っているシートに座った時に感じた違和感が僕を動かした。
それはほんの数センチかもしれない。
でも、いつも僕が座る位置ではなかった。
別に僕しか座らせないと約束したわけじゃないし、
マネージャーに運転してもらってあなたが座ったのかもしれない。
だけど、そのわずかな誤差が僕には我慢できなかった。
そこにはたしかに僕以外の誰かが存在したのだから。
シートベルトを締めるときにわずかに頬にかかったあなたの吐息が僕の体に火を点ける。
あなたと僕の間には1ミリだって隙間があってはダメだ。
もうここに誰も座らせることができないように、この場所であなたに抱かれる。
あなたが助手席を見るたびにここで愛し合ったことを思い出すように、
あなたに抱かれて乱れる僕を思い出すように、
あなたが僕のものだとあなた自身に刻みつけるために。
お互いに名前を呼びながらコート脱がせ、ボタンをはずして肌を露わにする。
車内とはいっても冬の深夜は冷えるから、全部は脱がせないけれど
服を着たままで愛し合うことは滅多にないから、2人ともすぐに息が荒くなる。
もっと僕に夢中になって、僕だけを見つめていて。
僕だけがあなたを狂わせ、愛される存在でしたい。
僕だけがあなたを癒し、支える存在でいたい。
早くあなたを僕の中に閉じ込めたい。
ずっと繋がったまま溶けてひとつになってしまいたい。
あなたと2人だけの楽園で僕は何度もあなたに恋をする。
fin.
(画像をお借りしています)