一人で帰されて、いつもよりも少しだけ広く感じるこの部屋で、
あなたを待ちながら窓の外を眺める。
夜の街は今日はどこかよそよそしく僕を拒んでいるように見えた。
こんなとき、自分が外国人であると思い知る。
1年のうちの数カ月過ごすこの場所は第2のわが家だけれど、
あなたがいないだけで、こんなに心細くなる。
テレビを見る気になれず、音楽も聞く気になれない。
あなたがいないだけで世界は無色で無音になってしまうみたいだ。
ぼくの心が渇ききってしまう前に早くあなたの愛で潤してほしい。
リハーサルのとき、いつもよりきつめに握り合った手の感触を思い出し、
僕は自分の体を抱きしめるように腕を強く掴んだ。
この世界にあなたと2人きりしかいないかのような、恍惚と孤独。
握り合った手から伝え合う2人だけのサイン、
一瞬絡まるだけの視線、それが僕たちのすべて。
ステージでもたまに感情がすごく昂って、あなたの首筋に噛みつきたくなる。
あなたが僕の体に愛を刻みつけるように、僕の刻印を刻みたい。
あなたは僕のもの、だよね。
そういうんじゃないってわかってる。
彼女は先輩であり、親友で、恋愛の対象としては見てないって。
いくら取材だからってあんなにリラックスした表情で顔を寄せているのを見たら、
彼女があなたの腕にすっぽりと入るくらい小さくて可愛らしいのを見たら、
つい余計なことを考えちゃってへこむんだ。
そこは僕の場所なのに…。
玄関で物音がして、あなたが静かに部屋に帰ってきた。
僕が寝てると思ってあまり物音をたてないようにしたんだろうけど、
どんなに小さくてもあなたの足音には気づいてしまうんだ。
「チャンミナ、まだ起きてたのか。どうした?テレビもつけないで」
「どうもしません」
「ちゃんと湿布替えたのか?」
「言われなくてもやってますよ。早く治さないと仕事できないですから」
「そうか、それならいいよ。早く寝れば?」
「ヒョンこそこんな時間まで飲んでたんですか?体調悪いのに」
あなたは何も悪くないのに自分でぐるぐる考えてヘンな態度を取ってしまっている。
一人で帰ってきたこととか、ネットに上がった写真とか書き込みとか、
気にし出したら限がないのはわかっているけれど。
「何拗ねてるの?」
「拗ねてなんかいません」
「じゃあ一人にしたから怒ってるの?」
「違います」
「今日はせっかく楽しかったのにお前は機嫌が悪いんだな」
「別に機嫌なんか…」
あなたが後ろから僕を抱きしめながら耳元で囁く。
「じゃあ機嫌直して。昨日今日とあんなに可愛いいちご見せられてもう我慢できないんだけど」
「ヒョン…」
あなたの手が僕の顎を捉え優しく後ろを向かせるといちごよりも甘いキスが待っていた。
あなたが望むなら、いつでもいちごみたいに食べられたい。
僕はあなただけのいちごになるから、
お願い、僕を食べて。
(画像はお借りしています)