「イヤだ、ヒョン、待って。行かないで」
自分の叫ぶ声で目が覚めた。
なんだか酷い夢を見ていたい。
僕の体は汗でびっしょりで、顔も涙でぐちゃぐちゃだ。
それよりもどうして僕は一人ぼっちで自分のベッドにいるんだろう。
寮生活を始めた日から、僕は自分のベッドでもヒョンのベッドでも一人で寝ることはなかった。
僕のベッドで寝る時も狭いけど2人で抱き合って寝たし、ヒョンのベッドでも体が離れることはなかった。
それなのに、僕は今どうして一人なんだろう。
どうしてヒョンは僕のベッドにいないんだろう。
悲しくて涙が出る。
時計を見るとまだ朝までは少し時間がある。
もう一度ヒョンの部屋に行ってみようか…そうだ、今夜もヒョンの部屋に行ったはずだった。
僕たちの寮は古いレンガ造りの建物に後から建て増しした比較的新しい建物とが繋がっている。
ヒョンの部屋がある南棟と僕の部屋がある北棟とは中央の通路で繋がってはいるけれど、
僕たちの部屋は両端にあるので、本来ならば廊下を通ると一番遠くに位置している。
けれども、昔、なぜかこの2つの部屋には隠し通路が作られ、最短距離でつながっていた。
もちろん、この事実は寮監と寮長しか知らないし、使用されたこともない。
僕の部屋は本来は空き部屋にしているところなのだ。
毎日、夜になるとその通路を使って僕たちはお互いの部屋を行き来し、
どちらかの部屋で朝まで一緒に過ごす。
特に部屋を訪ねてくる人はいないけれど、一応普段は目隠しでふさいである。
昨夜は僕がヒョンの部屋に行くことになっていて、僕は寝る仕度をすると通路を通って、
いつものようにヒョンの部屋に通じる扉を軽くノックした。
間違って誰かがいたら困るのでいつもこうして合図をしてヒョンが扉を開けてくれるのを待つ。
ヒョンは僕が来るのがわかるのか、ノックをする前に僕を迎えてくれる。
たいていは待ち切れずに通路の中で抱きしめられることが多い。
ベッドまで待てずに何度もキスをして、そのまま抱き上げられてベッドに連れていかれる。
ヒョンが僕の部屋に来る時は、シャワーから出るとバスタオルに包まれてそのままベッドに押し倒される。
それなのに、昨夜はヒョンは僕を迎えてくれなかった。
ノックをしたけど返事がないから扉を開けることができない。
たぶん押したら開くのだろうけど、ヒョンに迎えてほしくてそれもできない。
まだお風呂に入っているのかな?
それとも誰かと電話でもしてるの?
僕は扉の前で膝を抱えてヒョンを待っていた。
早く迎えに来て。
僕を一人にしておかないで。
でも、とうとうヒョンは迎えに来てくれなくて、僕はそのまま眠ってしまったんだ。
毎晩ヒョンと過ごしているからか、僕はいつも眠くって、
ヒョンがベッドに運んでくれたのに気づかなかったみたい。
ヒョンは起してくれたかな。
眠っている僕にいつもの優しいキスをしてくれたかな。
僕が起きなくてがっかりして自分の部屋に帰ってしまったのかな。
ヒョン、一人にしてごめんね。
僕も寂しくてこのままじゃ眠れないよ。
もうヒョンの腕の中じゃないと眠れないよ。
酷くイヤな夢を見た気がするんだ。
ヒョンの体温で僕を溶かして、
ヒョンの匂いで僕を包んで、
すべてを忘れるくらいに抱きしめて。
今すぐ、来て…。
to be continued ...
