「チャンミナ」


遠くでお前の名前を呼ぶ誰かの声が聞こえてハッとする。

何度か見かけたことがある顔だ。

いつの間にかお前の親友のポジションを手に入れたうらやましいその男の横で

お前は俺の前にいるときとは違う顔でその男に微笑みかける。


授業中の真面目な顔や休み時間のリラックスした顔、

冗談を言い合って微笑みあう顔、どれも俺は知ることができない。

俺の知らない顔をそいつは全部知っているんだ。


やめてくれ。


お前は俺だけのものだろう?

今朝まで俺の腕の中で俺だけを見つめていたじゃないか。

そんな顔で俺以外の男を見つめないでくれ。


楽しそうに笑い合い、ふざけあう姿を視界の外に追いやって、その場を離れる。

できるだけ早く、誰にも気づかれないように、独りになれる場所へと急ぐ。

今の自分の顔を誰にも見られてはいけない。

これまでずっと努力して被り続けた温和な優等生の仮面が剥がれてしまう。

嫉妬に狂った、見苦しい顔をしているに違いないから。


月の明るい夜は君と手をつないで歩こう
















独りになれる場所は、やっぱりお前と初めて会った古い温室しかない。

今までずっと独りになりたい時、ここに来て心を落ち着かせていたのに、

お前に出会ったあの日から、すっかり足が遠のいてしまっていた。


真ん丸にした目をキラキラさせていたお前、ちょっとはにかんで俯くお前、可愛い顔ばかり浮かぶ。

明るい太陽の下が似合うお前を夜の檻に閉じ込めてしまうなんてできない。

普通にお前の隣を歩いてしゃべったりふざけ合ったりすることがこんなに難しいなんて思わなかった。


親の事情がなくたって男同士未来があるわけではないけれど、

せめてこの閉ざされた環境の中では幸せでいられたはずだ。


ずっと夜を共に過ごしているのに、明るい陽の下で逢えないことが苦しい。

お前のすべてを俺だけのものにできないことが苦しい。

すべてを俺に預けてくれているけれど、まだ足りないと、もっと欲しがる俺がいる。


夜ごとお前を抱きしめて、俺なしではいられなくなるようにその体を支配する。

唇も体も愛される悦びを教えたのは俺だ。

何度もその体に愛を注ぎ込んで、お前の細胞までも侵していく。

お前が女だったなら、閉じ込めて俺の命を孕むまで何度も抱いて俺のものにできるのに。



早く夜になればいい。

お前を早く抱きたいけれど、今夜は優しくしてやれないかもしれない。

お前を泣かせたくないけれど、思い切り貫いて啼かせたい昏い欲望に支配されそうだ。

お前を愛するあまり嫉妬に狂いそうだ。

チャンミナ、お前が欲しくて狂いそうだ。



to be continued ...

月の明るい夜は君と手をつないで歩こう