夜になる。
やっとあなたに会える待ち遠しかった時間。
部屋のカーテンを閉め、ドアに鍵をかけて、シャワーを浴びる。
これからあなたに愛される体に石鹸をすべらせ身を清める。
あなたは僕の匂いが消えちゃうって言うけれど、
僕は早く僕の体にあなたの匂いをつけてほしい。
あなたでいっぱいにして、あなたと融けてひとつになってしまえばいい。
離れていた時間の記憶を消してしまえばいい。
僕にはあなたとの時間だけがあればいい。
朝、あなたの腕の中、あなたのキスで目覚める。
顔中にキスをして腰を引き寄せられると、夜の記憶に体が反応してしまう。
初めての夜には硬い蕾だった体が少しずつ熟して花開くように
夜ごと愛されて、いつでもあなたの思うまま乱れる体に変わった。
ずっとベッドの中にいるわけにはいかなくて、自分の部屋に戻るのがとても寂しい。
あなたの部屋を出ると、また僕たちは目も合わせない他人にならなくてはいけない。
カーテンを開けると部屋には陽が差し込み、僕は一人の部屋であなたを思う。
また1日が始まり、あなたと別々の時間を過ごさなくてはいけない。
気持ちを隠すのは慣れているけれど、夜までの時間がこんなに長いなんて知らなかった。
夜ごと愛されて気だるい体をひきずるようにして部屋を出る。
誰にも気づかれてはいけない秘密の恋はこの部屋に置いて行こう。
転校して3カ月もたてば、仲のいい友達もできる。
相変わらず言いよってくる人はいるけれど、友達が守ってくれる。
「チャンミナ、お前ホント男にモテるよな」
「冗談言わないでよ。気持ち悪い」
「でもさー、こうも女っ気がないとお前みたいに可愛いやつなら男でもいいかってなるぜ」
「キュヒョナ、まさかお前…」
「いやぁ、お前最近なんか色っぽい時あるしさ」
「もうお前とは口きかない」
「嘘だよ、冗談だって。本気にするなよ」
「今度同じこと言ったら絶交」
「はいはい。肝に銘じますよ。ったく、顔は可愛いのに口悪いんだよなー」
「別に普通だろ?」
「いや。お前に言い寄ってくるやつらは知らないんだよな。知ってて来るなら相当なドMだろ」
「言ってろよ。僕はそんな奴とは口なんかきかないから」
「面と向かってそう言ってやればいいのに」
「先輩に向かって言えないだろ」
「猫被ってんな」
たまたま席が隣になったキュヒョンとは何かと気があって、いつもつるむようになった。
この学校で初めてできた唯一の親友だ。
彼とつるむようになってから僕は学校でも緊張しないで過ごすことができるようになった。
ヒョンといられない寂しさを埋めてくれる存在で、何でも言い合える仲だけど、
唯一、ヒョンとのことだけは彼にも言えないことだ。
ヒョンと僕との2人だけの秘密だから、たとえ親友のキュヒョンにだって言えない。
僕に何かあることは察していても何も聞かずに傍にいてくれるありがたい存在だ。
それでも、廊下のずっと向こうにあなたの姿を見つけたり、
生徒集会で壇上にいるあなたを見たりするのは本当に切ない。
あなたのまわりにはいつも人がたくさんいる。
誰にでも等しく優しく微笑むあなたを見るのは本当につらい。
みんながあなたに憧れ、あなたに近づこうとする。
その人は僕の恋人なのに。
誰よりも愛しい人なのに。
あなたの唇が僕以外の誰かの名前を呼ぶのはイヤだ。
あなたの瞳が僕以外の誰かを映すのも、
あなたの手が僕以外の誰かに触れるのも、イヤだ。
誰にも笑いかけないで。
誰にも優しくしないで。
誰にも触れないで。
夜になれば僕だけを映す瞳、僕だけに触れる手、僕だけを愛する唇、
そのすべてが恋しくて泣きそうになる。
偶然すれ違った時、必死で知らないふりをしているのに、
あなたがこっそり指を絡ませ、ふと香るあなたの匂いに体が痺れ、
振りかえらないように必死で体を硬くしていなければいけなかった。
あなたが見えなくなってからやっと振り返ってあなたが通って行った後を見つめると
胸が苦しくて泣きそうになる。
あなたと過ごせる短い時間は天国にいるみたいに幸せで、
あなたと離れている時間はこんなにも辛いなんて。
僕はいつからこんなに弱い人間になってしまったんだろう。
愛しいあなた、
恋しいあなた、
夜だけは僕のもの。
早くあなたの下に帰りたい。
あなたの腕に抱かれて狂ってしまいたい。
夜しか愛しあえないのなら、朝なんてこなければいい。
to be continued ...