RRRRR…


今年は秋夕に休暇がもらえたので実家でのんびりすることができた。

そろそろお前の声が聞きたいと思っていたらタイミングよく、電話がきた。

さすがは俺の最強の相棒だ。


「ヒョン?」


「チャンミナ」


「今なにしてる?」


「特に何もしてないよ」


「ひとり?」


「どうだと思う?」


「ふざけないでよ」


お前のちょっとすねた声が聞きたくて、わざとふざけてみる。

今は別々の家に住んでいるし、一緒のスケジュールばかりじゃないから離れていることも珍しくはない。

それぞれ違う国にいることだってある。

それが、こうしてお互い実家にいるというだけでなぜか感傷的な自分に笑える。


「もう墓参り行った?」


「まだこれからです」


「俺は行ってきたよ」


「そうみたいですね。みなさんお変わりないですか?」


「お前も先月会ってるじゃん」


「それはそうですけど、なかなか帰れないから喜んだでしょう?」


「まあな。この前も帰ったけど」


「それは仕事でしょう?でもよかったですね。この間はゆっくりできなかったから」


「ゆっくりしすぎてボケそうだよ」


「やめてください。連休が終わったら忙しいんですよ」


「そうだな」


「実家で充電できてよかったじゃないですか」


「充電はここじゃなくてもできるよ」


「ヒョン?」


「月がきれいだな」


「ヒョン…」


お前はこのキレイな満月を一緒に眺めたくて電話してきたんだろう?

他の誰でもなく、俺とお前、ふたりきりで。

そばにいれば表情だけで何を考えているかお互いわかる。

でも、こうして離れていても、電話越しのお前の声だけで、

かすかに伝わるお前の息遣いだけで、お前の思いが伝わってくる。


「今年は一緒に見られないな」


「去年は忙しかったです」


「俺は忙しい方がいい。立ち止まるのは性に合わない。イヤなことを思い出すしな」


「僕も…今は忙しくていいです。夏までは実際忙しかったし」


「今夜の月もキレイだけど、先月見たあの月もキレイだったな」


「はい。夢の舞台でしたから」


「あんな風に野外でLIVEやって、月がキレイでってちょっと感動したろ」


「ヒョン、僕も同じこと考えてた」


「あの夜のこと覚えてる?」


「月のこと?」


「LIVEの後、ホテルに帰ってさ、」


「ちょっ、ヒョン、何言って」


「あの夜のチャンミンは可愛かったなぁ。何度もヒョンもっとしてってしがみついてきてさ」


「電話でなに言ってんですか。最低ですよ」


「いやぁ、キレイな月を見ると思い出しちゃうんだよなぁ」


「エロオヤジ」


「エロオヤジでいいよ。チャンミナ、充電させてよ」


「ばっ、もう知りません。もう切りますよ」


「待ってよ、チャンミンナ、冷たいじゃないか。去年みたいに食べさせてよ」


「な、何言って…セクハラで訴えますよ」


「なんで松餅食べさせてがセクハラになるんだよ。お前何想像したの?やらしいな」


「ヒョンになんて一生松餅食べさせてなんてあげません。もう切ります」


「ちょっと、チャンミナ…」


お前も電話もキレてしまったらしい。

もうちょっと声を聞いていたかったのに、残念だ。

今頃、お前はまたいつものように耳だけ赤くしてるんだろうな。

ぷんぷん怒りながらもお前は俺がほしい温もりをくれる。

一生ね、そうだな。

一生そばにいてくれるなら松餅は俺が食べさせてやるよ。


故郷は懐かしいし実家に帰るとホッとする。

地元の友達に会えるのもうれしい。

それでも、俺の帰るところはいつだってお前のところだ。


早く帰りたい。

早くお前に会いたい。

早くお前に繋がれたい。


電話だけでもあともう少し…。


機嫌を損ねたままにするのもよくないから、今度は俺が電話をかけるよ。

お前だって待ってるだろう?

だから、今度は途中で切らないで。

いつだって繋がっていたいだろ?


Hold on, baby.

Because I miss you.



fin.