廃墟のような古い建物に隠れたそこは誰も知らない小さな庭。
あなたと僕だけの…秘密の隠れ家。
秘密のはじまり、それは夏の終わりのある日のこと
父の仕事の都合で、僕は高校に入って最初の夏休みに
とある高校に転校することになった。
やっと学校に慣れてそれなりに友達もいたんだけど、
それほど執着があったわけじゃないから僕はそれを受け入れた。
夏休みの終わりに新しい学校に手続きと挨拶で行った帰り、
僕は一人で校内を歩いてみることにした。
都心からは少し離れた自然に恵まれた土地にある伝統校で、
建物は歴史的価値のあるものらしく、どれも古めかしく重厚な造りだった。
無機質な鉄筋コンクリートよりも僕はこの雰囲気が気に入った。
男子校ではあったけれど、思ったよりも清潔で、
古いものを大事に手入れして使っていることが伺われ、
校内のあちこちの掲示などからも伝統を背負う者のプライドが感じられる。
ここでうまくやっていけたらいいなと素直に思った。
まだ残暑のまぶしい日差しを避け、グランドにはまわらずに校舎裏に足を向けた。
ずっと奥の方には深い森が見え、この季節は木陰が気持ちいいかもしれない。
でも虫がいっぱいいるかもしれないから別のところに行こうとすると、
向こうからガシャンと物音が聞こえた。
何があるのだろう。
ちょっとだけ見に行ってみよう。
いつもならそんなことはしないけれど、何か心引かれるものがあって、
僕は森の方に歩いて行く。
ちょっと怖いな。なんか暗いし、もう引き返した方がいいかも。
森の手前で引き返そうと振りかえると、今度は廃墟のような建物が目に入る。
かなりボロボロだし、きっと昔使っていた建物がそのままになっているんだな。
夜だったらきっとお化けがでそうな感じ。
僕はお化けは苦手だからそこには近づきたくないと思った。
「きみ、そこで何をしてるの?」
後ろから不意に声をかけられて僕は思わず飛び上がった。
to be continued ...
