「だからこのまま電話でさ…」
耳を疑った。何を言い出すんだこの人は。
つまりこのまま電話で続きっていうのは…
まさか、テレフォンセックスしようってことか?
「なにをバカなこと言ってるんですか」
まったく、時々あなたの思考についていけないときがある。
たぶんあなたほど振り幅の広い人はいない。
天使かと思えば悪魔だったり、優しいと思ったら厳しかったり、甘いと思ったら冷たかったり、
子どもっぽいと思うと意地悪な大人の男だったり、
とにかくいつだって僕はあなたに振り回されっぱなしだ。
でも、この場所を誰にも譲る気はない。
この世界で僕だけがあなたに振り回され、あなたに愛される存在でいたい。
あなたが僕に求めることは何だって応えたいんだ。
だからってこれはちょっと…。
「まだ酔っぱらってるんですか?」
「酔ってないし、俺はいたって真面目だけど」
「真面目が聞いてあきれます。あなたにそんな趣味があるなんて知りませんでしたよ」
「だってあんなに可愛くおねだりされたら恋人としては放っておけないだろう」
「まだ言うか」
「だってお前今どこにいるの?もしかしなくてもそこベッドだろ」
「そ、それは…」
「それは?」
「もう寝ようと思ったからベッドにいたっておかしくないでしょ」
「いつも2人で寝るベッドに1人で寝られるの?お前」
「当たり前じゃないですか。ベッドは寝るためにあるんですよ」
「いつもはただ寝るだけじゃないだろ?ほら、いいから服脱いでごらん」
「ちょっと、何言って…」
「あれ?それとも実はもう脱いでる?」
「どこの世界に裸で電話かける変態がいますか」
「うーん、この際変態でもいいけど?」
「まさか、あなた…」
「どうだと思う?俺が今どんな格好してると思う?俺が今したいことわかる?」
「知りません、そんなこと」
「そう?俺は知りたいよ。いつでもどこでもお前が何を思っているか」
「僕が、何を思ってるか?」
「そうだよ。言ってごらん。今どうしたい?何を考えてる?」
「別に何も考えてませんよ」
「じゃあ、なんで俺に電話くれたの?」
「それは…それは、あなたがだらしないから、スケジュール忘れてないかと思って」
「それだけ?俺が帰る日を忘れると思ったの?」
「いえ、ヒョンはいつも仕事はちゃんとする人ですから、心配してないですけど」
「じゃあなんで?」
「イヤ、ですか?僕がこんなふうに電話するの」
「どうしてそんなこと言うんだ。お前の声が聞けてうれしかったよ」
「嘘。ヒョンは電話してくれなかったじゃないか。僕のことなんて忘れてたくせに」
「お前がせっかく実家でのんびりしてるのに邪魔したくなかったんだよ。
本当は声が聞きたくてたまらなかったよ」
「嘘つき。酔っぱらって楽しそうにしてたじゃないか。僕以外の誰と飲んでたんだよ。
僕のことなんか忘れて楽しくやってたくせに」
「うれしいね。ヤキモチか?」
「違います!僕のことほったらかしで遊んでるヒョンにヤキモチなんかやかない」
「嫌いになった?」
「そんなこと言ってません」
「じゃあ好き?」
「言いません」
「チャンミナ、言ってよ。俺はお前にヤキモチ妬かれたいし、好きだって言ってほしい」
「ヒョンは我儘だ」
「うん、そうだね。チャンミンに関してだけは我儘になるよ。
だからね、チャンミンも俺に我儘言っていいんだよ」
「僕が?」
「そう。お前はすぐ言いたいことを飲み込んでしまうから、俺にだけはうんと我儘言っていいんだよ」
「我儘言うの?」
「うん。言って、チャンミナ。お前の我儘なら何でも叶えてあげるよ」
「そんなこと言って、無理だよ。今すぐ逢いたいって言ったらどうするの?」
「今すぐ逢いたいの?」
「うん。ヒョン、今すぐここに来て」
「明日になれば帰るのに、今すぐ?」
「うん、ヒョン、逢いたい。電話の声だけじゃ…もうイヤだよ」
「わかったよ。ちょっと待っててね」
「え?ちょっとヒョン?ヒョンってば」
急に電話が切れてしまって慌てる僕の腕が突然後ろにひかれ、
懐かしくて恋しくてたまらないあなたの匂いに包まれた。
信じられない気持で振りかえると、そこにはあなたがいて、
驚いて動けないでいる僕にゆっくりと近づいて、抱きしめた。
「どうして、ヒョン?」
「チャンミナ、逢いたかった」
to be continued ...