一体どれくらい 気を失っていたんだろう。
あなたの体温に包まれて、幸せなまどろみから目を覚ますと、まだ夜明けには時間があった。
僕をすっぽりと腕の中に納めて満足そうに眠るあなたを起こさないように、そっとベッドを抜け出す。
ベッドのまわりに脱ぎ散らかした服を、ひとつひとつ拾っていると、
夢じゃなかったのだと、いろいろ思い出されて恥ずかしくてたまらない。
すっかり赤くなってしまっている顔を冷やそうと洗面所に向かった。
本当ならシャワーでさっぱりしたいところだけれど、
あまり長い時間離れていると、きっとあなたを起こしてしまうから、
水で顔を洗って、からからの喉を潤す。
思い切り愛された体はあちこち痛いし、体中にあなたに愛された痕が残されていて、
それでも鏡の中の満足そうな自分があまりにも恥ずかしくて、
どうやってベッドに戻ったらいいのかわからない。
この痛みも痕も、あなたがくれたものだから、もっと痛くしてもいいし、もっと痕をつけたっていい。
恥ずかしいけれど愛を交わす喜びはあなたが教えてくれた大事なもの。
何度愛されても僕はもっと欲しがってしまうんだ。
ひとつひとつ指で辿れば、そのときのあなたの表情も声も吐息もまた蘇って、僕をまた熱くさせる。
ずっとあなたの腕の中で愛されていたいんだ。
窓辺に立ってカーテンの隙間から外を見ると、街はまだ夜の帳の中。
あと数時間で日が昇る、この静かな時間を一人で過ごすのは寂し過ぎる。
あなたが傍にいるからこその、この安らかな時間が僕の至福の時だ。
僕はあなたを愛して幸せだ。
あなたに愛されて幸せだ。
少し前まではあんなに夜明けを願って、早くあなたに逢いたいと思っていたのに、
あなたと一緒にいると、時間が止まってほしいさえと思ってしまう。
そうしているうちに寝室からぽんぽんと物音が聞こえてくる。
あなたの手が、指が僕を探す音だ。
このままではあなたが目を覚ましてしまう。
早くあなたの腕の中に戻ろう。
いつもこうして愛された後、指1本動かすのも億劫なくらい気だるい体を起して
寝ぼけたあなたが僕を探すのを見るのが好きだ。
いつも、夢の中でもあなたの腕の中には僕がいるんだね。
そっとベッドにもぐりこむと、あなたの手が伸びてきてまた僕を抱きしめる。
あなたの胸に顔をうずめると、あなたは僕の髪に顔をうずめて満足そうなため息をもらす。
ユノ、夢の中でも、起きているときでも、そしてどんなに離れているときでも、
僕はいつでもあなたの腕の中にいるよ。
だから、ずっとずっとこうして僕を抱きしめていて。
僕が離れそうになったらちゃんと探してあなたの腕の中に閉じ込めて。
僕のわがままをすべて受け止めてくれる愛しいあなた。
僕が逢いたがるってわかっていて、自分が逢いたかったんだって言ってくれるあなた。
今夜は逢えないと思っていたのに、帰ってきてくれた。
ちょっと格好良過ぎて悔しいから、うれしいなんて絶対に言わないけど、
どうせあなたにはお見通しだろうね。
でも僕が電話しなかったらどうしてたんだろう…どうやって僕を驚かそうとしてたんだろうね。
聞いてみたいような気もするけれど、あなたに逢えたからいいや。
今夜のサプライズは成功だよ、と、まだ眠っているあなたにキスをした。
fin.