久しぶりのアメリカ。
仕事で何度か来たことがあるけれど、今回は初の単独コンだから、
また今までと違った気持ちでやってきた。
狭い会場だしいつものような凝った演出もできないけれど、
それならそれで俺たちはいつものようにやるだけだ。
今日はスタッフとの打ち合わせの後は移動で疲れた体を休めるだけだ。
思い出すと、2人でやっていくと決めてから毎年ここには来ているんだな。
今まではSMTOWNの仲間と一緒だったけれど、今回は2人きりだ。
俺は…賑やかなのも好きだけど、やっぱり2人が一番いい。
2010年、季節は違うけれど仲間と一緒に初めて降り立ったLA。
一時期やせ細ったお前が新たな挑戦を始め、やっと普通に笑えるようになった頃だから
あの時の公演は本当に感慨深い。
今と違って髪が長かったとか思い出はたくさんあるけれど、
恋人としての俺たちはほんの少しの時間でも離れていたくなくて、
ホテルでお前を誘いにくる後輩たちが邪魔に思えたものだ。
今もときどきそんな感情にとらわれることもあるが、お前が嫌がるから我慢している。
「つまらない嫉妬なんてやめてください」
いつもお前はクールに切り捨てる。
だけどそういうお前も、俺が他の後輩と肩を組んでいると睨んできて、
さらに俺に見せつけるようにあいつらと絡むんだ。
2人だけだとそういうのがないだけ気が楽かもしれない。
進行表をチェックしながらそんなことを考えていたら、
隣にいたはずのお前が窓際に立って外を眺めていた。
何か気に入らないことがあったのだろうか、背中が拗ねている。
構ってやるべきか放っておくべきか数秒の逡巡の後、やっぱり構うことにした。
お前を放っておくことなんか俺にはできない。
「チャンミナ」
いきなり驚かさないように努めて優しいこえで囁きながら、その細い肩を背中から抱きしめた。
「なんですか、いきなり。暑苦しいですよ」
俺が気づくのを待っているくせに冷たい返事だ。
可愛い丸い後頭部に顔をうずめて髪の匂いをかぐように鼻をこすりつけると鬱陶しそうに首をすくめるお前。
イヤそうな振りをしても耳が真っ赤になっているからわかるよ。
「何考えてたんだ?うん?」
「別に。明日のこととか…ヒョンはすっかりリラックスしてるみたいでいいですね」
なんか言葉に棘があるなぁ…。
「いや?こういう形式のステージは最近なかったから、ちょっとは緊張してるよ」
「でもオフもあったし、ゆっくりリフレッシュできたでしょ」
日本のツアーが終わって帰国した俺たちは別々のスケジュールで、お互いオフもあった。
たしかに俺は友達とキャンプに行ったけど…まさかこれか?
慌ててチャンミンを抱きしめる腕を強くする。
「オフもいいけど、俺はひさしぶりにまた一緒にいられてうれしいよ」
「嘘ばっかり」
「俺がお前に嘘ついたことなんてあったか?」
黙り込むお前。俺の腕の中で顔だけ振りかえっていつもの上目遣いで睨んでから、
目をそらすと、ぽつりとつぶやく。
「写真上がってたの見ましたよ。楽しそうだった」
「ああ。あいつらとは久しぶりだったから。お前も一緒に行きたかった?」
「そんなこと言ってません。だいたい僕はキャンプなんか好きじゃない」
「そうだった?じゃあ何が気に入らないんだ?」
「別に…ヒョンが楽しかったならいいです。ずっと忙しかったし、休みもなかったし」
「うん。それはお前もだけどな」
「でも…」
「でも?」
「僕以外の人といるときにあんな顔で笑わないで」
「チャンミナ?」
「嘘です。なんでもありません。もう放してください」
「いやだ」
「ヒョン?」
「こんなに幸せな気分なのに、なんで離さなきゃいけないんだ?」
チャンミンがヤキモチなんてなかなか見せてくれないから、最高に幸せな気分だ。
お前は腕から逃れようとちょっと体をよじるけれど、すぐにあきらめておとなしくなる。
久しぶりの体温をお互いに離せない。
「もう…。あ、ヒョン、ほら見て」
窓の外を見ると、遠くに花火が見える。
「ああ、花火だな。そうか今日は独立記念日だから花火をあげるのか」
「きれいですね」
「うん。バルコニーに出てみるか?」
「そうしたいのはやまやまですけど、どこでカメラが狙ってるかわかりませんから」
「うーん、俺はいいけど。こうやってチャンミン抱きしめながら花火見たい」
「そんな写真取られたら困るじゃないですか」
「まあね。本当は見せびらかしたいんだけど、そうもいかないか」
「まったく、ふざけないでください。リーダーのくせに」
「いやぁ、うちのチームにはしっかり者のマンネがいるからね」
「まだ僕をマンネ扱いしたいんですか?」
「しかたないだろ、ホントのことなんだから」
「僕の方がしっかりしてるのに…」
「ああ、いつも頼りにしてるよ。俺のチャンミンは最強の相棒で恋人で最高」
「口先ばっかり」
「ヒョンは嘘は言いません。お世辞もいいません。だろ?」
「それはそうだけど…。ねえ、ヒョン?」
「なに?」
「さっき思い出してた。最初に2人でやったときのこと」
「うん。俺もだ」
「8月にソウルでやった後だったよね。ソウルのときヒョンが言ってたことだけど」
「ああ。俺たち2人でまた花火をあげようって言ったな」
「うん。あれでやるぞってすごいテンション上がったよ。緊張もしたけど」
「そうだったな。足が震えるし、喉がからからだったろ?」
「ふふ、そうだったね。今もあんな感じかな」
「そんなに緊張してるのか?」
「あの時とはまたちょっと違うけど。でも嫌いじゃないんだよ。こういうの」
「俺もだよ」
「明日、アメリカではじめての単独公演だね」
「ああ、遠回りしたけど、やっと来たな」
「また夢がひとつ叶うね。また2人で花火をあげるんだね」
「そうだ。たとえ小さな会場だろうと俺たちを待ってくれてる人がいるから今の最高を見せよう」
「ペルーは残念だったけど…」
「ああ、いつかきっと来よう。他の都市でもできるように頑張るしかないな」
「できるかな、僕たち2人で」
「俺たちだからだろ?お前と2人なら何でもできるよ、きっと」
「僕も。ヒョンと2人なら何だってできるよ。これからもずっとだよ」
「ああ、永遠に、なんだろ?」
「そうだよ。永遠にヒョンと2人でやっていくんだから」
「じゃあ、俺にはお前しかいないってわかった?」
「ちょっと、真面目に話してるのに」
「真面目な話だろ?明日金髪美女に見惚れるなよ」
「ヒョンこそ…客席歩くなんて本当はイヤなんだけど」
「しかたないだろ、そういう構成なんだから」
「誰にも触られたくないのに」
「仕事だろ、チャンミン」
「わかってる。明日はもう言わないから今だけ言わせて」
「しかたないな」
「ヒョンは全部僕のなんだから。誰もヒョンに触ってほしくない」
「そんな可愛いこと言われたら、このままどうにかしたくなるなぁ」
「ダメ。明日は早いんだから」
「わかってるって。だからもうちょっとだけこうしてて」
「もうちょっとだけですよ」
「今は俺だけのチャンミンだ」
「ちょっと、ヒョン苦しいって…」
文句を言いながらも肩にもたれている顔は笑顔のままだ。
もうちょっとだけ、は花火が終わって再び夜空が暗闇に包まれても終わることはなかった。
- fin. -
**************************************************************
今回も楽しく参加させていただきました。
ゆのみん企画 第5回 ロスのふたり 参加のみなさまはこちら
構想はまとまっていたのですが、3連休、なかなか時間が取れなくて遅くなりました。
とりあえずロス公演前日のイチャイチャにしてみました。
ロス、というと、2010年9月4日のSMTLのときの2人の写真を思い出します。
私の大好きな写真です。
チャンミンに笑顔が戻ってよかったとホッとした時期でもありました。
懐かしいですね。
そして、なんかデキたてほやほやのカップルに見えるのは私だけかなぁ。(笑)


今回のイメージ曲はこちら。
そういえば昨年のシャイニコンのソロステージでKEYくんが歌った曲でした。
Katy Perry - Firework (Lyric Video)
(KatyPerryVEVOさんの動画をお借りしました)
仕事で何度か来たことがあるけれど、今回は初の単独コンだから、
また今までと違った気持ちでやってきた。
狭い会場だしいつものような凝った演出もできないけれど、
それならそれで俺たちはいつものようにやるだけだ。
今日はスタッフとの打ち合わせの後は移動で疲れた体を休めるだけだ。
思い出すと、2人でやっていくと決めてから毎年ここには来ているんだな。
今まではSMTOWNの仲間と一緒だったけれど、今回は2人きりだ。
俺は…賑やかなのも好きだけど、やっぱり2人が一番いい。
2010年、季節は違うけれど仲間と一緒に初めて降り立ったLA。
一時期やせ細ったお前が新たな挑戦を始め、やっと普通に笑えるようになった頃だから
あの時の公演は本当に感慨深い。
今と違って髪が長かったとか思い出はたくさんあるけれど、
恋人としての俺たちはほんの少しの時間でも離れていたくなくて、
ホテルでお前を誘いにくる後輩たちが邪魔に思えたものだ。
今もときどきそんな感情にとらわれることもあるが、お前が嫌がるから我慢している。
「つまらない嫉妬なんてやめてください」
いつもお前はクールに切り捨てる。
だけどそういうお前も、俺が他の後輩と肩を組んでいると睨んできて、
さらに俺に見せつけるようにあいつらと絡むんだ。
2人だけだとそういうのがないだけ気が楽かもしれない。
進行表をチェックしながらそんなことを考えていたら、
隣にいたはずのお前が窓際に立って外を眺めていた。
何か気に入らないことがあったのだろうか、背中が拗ねている。
構ってやるべきか放っておくべきか数秒の逡巡の後、やっぱり構うことにした。
お前を放っておくことなんか俺にはできない。
「チャンミナ」
いきなり驚かさないように努めて優しいこえで囁きながら、その細い肩を背中から抱きしめた。
「なんですか、いきなり。暑苦しいですよ」
俺が気づくのを待っているくせに冷たい返事だ。
可愛い丸い後頭部に顔をうずめて髪の匂いをかぐように鼻をこすりつけると鬱陶しそうに首をすくめるお前。
イヤそうな振りをしても耳が真っ赤になっているからわかるよ。
「何考えてたんだ?うん?」
「別に。明日のこととか…ヒョンはすっかりリラックスしてるみたいでいいですね」
なんか言葉に棘があるなぁ…。
「いや?こういう形式のステージは最近なかったから、ちょっとは緊張してるよ」
「でもオフもあったし、ゆっくりリフレッシュできたでしょ」
日本のツアーが終わって帰国した俺たちは別々のスケジュールで、お互いオフもあった。
たしかに俺は友達とキャンプに行ったけど…まさかこれか?
慌ててチャンミンを抱きしめる腕を強くする。
「オフもいいけど、俺はひさしぶりにまた一緒にいられてうれしいよ」
「嘘ばっかり」
「俺がお前に嘘ついたことなんてあったか?」
黙り込むお前。俺の腕の中で顔だけ振りかえっていつもの上目遣いで睨んでから、
目をそらすと、ぽつりとつぶやく。
「写真上がってたの見ましたよ。楽しそうだった」
「ああ。あいつらとは久しぶりだったから。お前も一緒に行きたかった?」
「そんなこと言ってません。だいたい僕はキャンプなんか好きじゃない」
「そうだった?じゃあ何が気に入らないんだ?」
「別に…ヒョンが楽しかったならいいです。ずっと忙しかったし、休みもなかったし」
「うん。それはお前もだけどな」
「でも…」
「でも?」
「僕以外の人といるときにあんな顔で笑わないで」
「チャンミナ?」
「嘘です。なんでもありません。もう放してください」
「いやだ」
「ヒョン?」
「こんなに幸せな気分なのに、なんで離さなきゃいけないんだ?」
チャンミンがヤキモチなんてなかなか見せてくれないから、最高に幸せな気分だ。
お前は腕から逃れようとちょっと体をよじるけれど、すぐにあきらめておとなしくなる。
久しぶりの体温をお互いに離せない。
「もう…。あ、ヒョン、ほら見て」
窓の外を見ると、遠くに花火が見える。
「ああ、花火だな。そうか今日は独立記念日だから花火をあげるのか」
「きれいですね」
「うん。バルコニーに出てみるか?」
「そうしたいのはやまやまですけど、どこでカメラが狙ってるかわかりませんから」
「うーん、俺はいいけど。こうやってチャンミン抱きしめながら花火見たい」
「そんな写真取られたら困るじゃないですか」
「まあね。本当は見せびらかしたいんだけど、そうもいかないか」
「まったく、ふざけないでください。リーダーのくせに」
「いやぁ、うちのチームにはしっかり者のマンネがいるからね」
「まだ僕をマンネ扱いしたいんですか?」
「しかたないだろ、ホントのことなんだから」
「僕の方がしっかりしてるのに…」
「ああ、いつも頼りにしてるよ。俺のチャンミンは最強の相棒で恋人で最高」
「口先ばっかり」
「ヒョンは嘘は言いません。お世辞もいいません。だろ?」
「それはそうだけど…。ねえ、ヒョン?」
「なに?」
「さっき思い出してた。最初に2人でやったときのこと」
「うん。俺もだ」
「8月にソウルでやった後だったよね。ソウルのときヒョンが言ってたことだけど」
「ああ。俺たち2人でまた花火をあげようって言ったな」
「うん。あれでやるぞってすごいテンション上がったよ。緊張もしたけど」
「そうだったな。足が震えるし、喉がからからだったろ?」
「ふふ、そうだったね。今もあんな感じかな」
「そんなに緊張してるのか?」
「あの時とはまたちょっと違うけど。でも嫌いじゃないんだよ。こういうの」
「俺もだよ」
「明日、アメリカではじめての単独公演だね」
「ああ、遠回りしたけど、やっと来たな」
「また夢がひとつ叶うね。また2人で花火をあげるんだね」
「そうだ。たとえ小さな会場だろうと俺たちを待ってくれてる人がいるから今の最高を見せよう」
「ペルーは残念だったけど…」
「ああ、いつかきっと来よう。他の都市でもできるように頑張るしかないな」
「できるかな、僕たち2人で」
「俺たちだからだろ?お前と2人なら何でもできるよ、きっと」
「僕も。ヒョンと2人なら何だってできるよ。これからもずっとだよ」
「ああ、永遠に、なんだろ?」
「そうだよ。永遠にヒョンと2人でやっていくんだから」
「じゃあ、俺にはお前しかいないってわかった?」
「ちょっと、真面目に話してるのに」
「真面目な話だろ?明日金髪美女に見惚れるなよ」
「ヒョンこそ…客席歩くなんて本当はイヤなんだけど」
「しかたないだろ、そういう構成なんだから」
「誰にも触られたくないのに」
「仕事だろ、チャンミン」
「わかってる。明日はもう言わないから今だけ言わせて」
「しかたないな」
「ヒョンは全部僕のなんだから。誰もヒョンに触ってほしくない」
「そんな可愛いこと言われたら、このままどうにかしたくなるなぁ」
「ダメ。明日は早いんだから」
「わかってるって。だからもうちょっとだけこうしてて」
「もうちょっとだけですよ」
「今は俺だけのチャンミンだ」
「ちょっと、ヒョン苦しいって…」
文句を言いながらも肩にもたれている顔は笑顔のままだ。
もうちょっとだけ、は花火が終わって再び夜空が暗闇に包まれても終わることはなかった。
- fin. -
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今回も楽しく参加させていただきました。
ゆのみん企画 第5回 ロスのふたり 参加のみなさまはこちら
構想はまとまっていたのですが、3連休、なかなか時間が取れなくて遅くなりました。
とりあえずロス公演前日のイチャイチャにしてみました。
ロス、というと、2010年9月4日のSMTLのときの2人の写真を思い出します。
私の大好きな写真です。
チャンミンに笑顔が戻ってよかったとホッとした時期でもありました。
懐かしいですね。
そして、なんかデキたてほやほやのカップルに見えるのは私だけかなぁ。(笑)


今回のイメージ曲はこちら。
そういえば昨年のシャイニコンのソロステージでKEYくんが歌った曲でした。
Katy Perry - Firework (Lyric Video)
(KatyPerryVEVOさんの動画をお借りしました)