糸を伸ばして、クモが巣を貼りました。
ふつう、風にのっていろんなポイントにはりめぐらす作業なのですが、どういうわけか、その日、その場所にはまったく風が吹きませんでした。
風がないため、大変苦労して立派な巣が完成しました。
そんな場所でしたが、思いのほか獲物がたくさんかかります。蚊やハエ、アブ、大きなハチもかかりますが、クモにはまったく怖くありませんでした。何しろ、かかったが最後、相手は動けなくなってしまうのです。
クモは大きくまるまると太り、巣はさらに幾重にも張り巡らされて、大きく丈夫になりました。
夏。近くのどこかの土の中から、クワガタが羽化しました。
気ままに飛び回る数日を過ごし、気がつくと土の上ではないところにいるのがわかりました。
コクワガタのオスです。
地上に出てきて、自分の仲間にも合いましたし、大きな敵がいることも知りました。食べ物には困りませんでしたが、やっかいな相手には逆らわないほうがいいということを、すでに学びました。
そんなクワガタにも、カノジョができました。
ちいさなコクワガタの中でも小さめな、かわいい女の子です。
デートを重ねるようになった、ある日のことです。
いつもの場所に、彼女は来ませんでした。
特にやることがあるわけでもないので、クワガタは待ちました。
一日待って、彼女は来ませんでした。何かあったんだろうなとは思いましたが、なぜかそんなに心配ではありませんでした。
次の日、同じ場所にいくと、彼女はやってきました。
聞くと、クモの巣に引っかかって、動けなかったそうです。
驚いて、どんな状況だったか聞きました。心配ないなんて事はなかったのです。
「たいしたことはないのよ」といいながら、事の顛末をはなしました。
脚が一本、引っかかったのが、どうしても取れなくて、一日もがいていたそうです。
すぐに大きなクモが来て怖かったといいましたが、彼女はつかまらずに、クモはすぐにひっかえしてしまったそうです。
右側の真ん中の脚が、2番目の関節からとれてしまったそうです。見ると、確かに脚が真ん中からなくなっているところがあります。クワガタは怒りました。
どうにかできるかはわかりませんが、とにかくいちど、クモの巣を見に行くことにしました。
土の上ではない、地面がおかしな具合に平らなところにいます。
毛でできているような、やわらかいところです。
歩くうち、ほどなく彼女の言うところに着きました。
見上げると、上のほうがかすんでよく見えないほど、クモの巣が幾重にも張り巡らされています。
はじっこのほうを、少し足先で弾いてみました。やわらかくねばねばしていて、油断するとくっついてしまいそうです。
・・・・まだ途中ですが、「前編」ということで。続きはまたすぐ?