物騒な事件が増えている。「物騒」とは、単に殺人や強盗、窃盗のことを指しているわけではない。もっと得体のしれない、動機の判然としない事件が増えているように思うのである。

昔の犯罪は、シンプルなものが多かった。それこそ、貧困に起因する強盗や窃盗、怨恨に起因する殺人といった具合に「動機」がはっきりしていた。

それがここ数年はどうだろう。動機が分からない無差別殺人や破壊行為、「何となくむしゃくしゃしていたからやった」という類の事件が、やたらと耳に増えているように思う。

何となく、世の中が全体的に「イライラ」している。そんな空気感は、私が日々、街を歩いたり、電車に乗ったりしている中でも、伝わってくる。

話は変わるが、ある専門家が「風俗店をなくせば、性犯罪が増える」と指摘していた。そうした店やサービスが「ガス抜き」の役目を果たし、犯罪を防いでいるとの指摘である。

しかし、本当にそうだろうか。世の中に猥褻な図画が溢れかえり、非合法まがいの性産業が幅を効かせ、それが人々の自制心を消し去り、欲望を暴走させるとの見方は出来ないだろうか。

昨今、2ちゃんやTwitterなどの匿名メディア、FacebookやmixiなどのSNSの利用者が増え、多くの人が不満や怒りを吐き出せるようになった。それで、現実生活が平穏になるのなら、喜ばしい。だが、現実にそうなっているかは微妙だと思う。

むしろ、匿名で発言できるメディアに限定して言えば、互いを理解しない者同士の誹謗中傷合戦が、人間の内側にある魔物を呼び覚ましているような感さえある。