我々制作プロダクションは、常に競争原理にさらされています。

世の中に同業者がごまんといる中でクライアントに選んでもらい、仕事を発注してもらう必要があります。

だから少しでも安く、クオリティの高い仕事をするか、自分たちにしかできない仕事をしなければなりません。

そうしなければ、いつでも仕事を失い、路頭に迷います。

一時期、あるクライアントと弊社は、映像制作においてほぼ独占状態で、競争原理が働いていなかった時期がありました。この会社にとって映像制作は、ほぼ初めてのことで、うちから持ちかけた話でもあって、全面的に任されていた感がありました。

相見積もりもなく、仕事を任せていただけたのは非常にありがたく、売上面でも助かっていましたが、あまり感心しない状況だと思っていました。そのため、私はよく「他の制作会社も探してみてください」と逆説的なことを話していました。

なぜ、そんなことを言ったかのか、それは競争原理が働かない中では、双方に甘えが出てしまうからです。

クライアントには、「これ位やってくれて当たり前」という理屈が生まれ、プロダクションには「これだけやってあげているのに」という理屈が生まれます。これらの理屈は競争原理が働かない中での利己的な理屈にすぎず、何の説得力もありません。

競争原理に晒されていれば、他と比較しながら、最適な仕事の進め方、価格設定というのが、自ずとはじき出されるはずです。

その後、そのクライアントさんは別の映像制作会社とも取引を始め、結果的に価格面での判断から、弊社との取引はほとんどなくなりました。これは仕方がないことですし、むしろ良かったと思っています。

世の中、すべての物の値段が同じなんてことが、あるはずもありません。キャベツ一つ買うにせよ、300円の物もあれば、200円の物もあります。必ずしも皆が200円の物を買うかといえば、そうではありません。見た目や産地などを判断しつつ、ある人は300円の物を買い、ある人は200円の物を買う。それが、当たり前のことであり、この競争原理の中でこそ、皆が幸せに暮らせていけるというのが、自由経済の大原則です。

が、この競争原理が働かない領域というのが、日本にもあります。代表的なものが電気です。私たちは、電気会社を選ぶことができません。いわば独占状態です。首都圏なら、東京電力から電気を買うしか、選択肢がないのです。

もし、「私は多少価格が高くても、クリーンで安全な電気を使いたい」という人がいても、東電の電気を使うしかないのです。東京電力は民間企業です。おかしな話ではないでしょうか。

よく「原発が止まると、電気代が高くなる」という理屈を聞きますが、それは本当なのでしょうか。競争原理も働かない中で、それをほぼ独占している企業が、そんな理屈を並べても、信用できるはずなどありません。

もし、東京電力の1社独占状態が崩れ、複数の会社が電気を売るようになれば、自ずと原発が作る電気が高いかどうか、判明することでしょう。現状、1社独占状態がある中で、「原発が作る電気は高い」などと、盲目的に考えてはならないと私は思います。