毎年6月ごろ、全国各地の学校で「教育実習生」の受け入れが行われます。「教員免許」を取得する人は、実際に教員となる人の数倍から数十倍にも上りますから、実習生の数は相当数に上ります。

世間的にはあまり知られていませんが、実習生の受け入れは、各学校の裁量に任されています。すなわち、制度上は、受け入れても、受け入れなくてもよいのです。

実習生の受け入れは、学校にとっては結構な負担です。授業の進度にも遅れが出ますし、学級づくりにも影響が出ます。「できれば勘弁してほしい・・・」と思っている先生方だって、少なからずいるでしょう。

でも、実際にはほとんどの学校が、快く(しぶしぶながら?)実習生を受け入れています。それは「少しは我慢してでも未来の教師を育てよう」という古き良き慣習・伝統が、公立学校の中にあるからだと思います。

でも、最近はトラブルも多いと聞きます。知人の大学教授は、毎年6月になると「お詫び行脚」をすると言っていました。受け入れ先の学校で、実習生が実にさまざまなトラブルを起こすからだそうです。

「トラブル」の中身はよく分かりませんが、免許取得だけが目的な人の中には、場をわきまえなかったり、学校の秩序を乱したりする人が多いのかもしれません。中には指導する教員の言う事を聞かず、自分勝手に教えたいことを教えてしまう実習生もいるそうです。

もちろん、多くの実習生はまじめに取り組んでいます。でも、そんな実習生においても、学校のセオリー、職員室の文化を把握していなかったがために、とんだ失敗をしでかすことがあります。これは、ある意味で「不可抗力」だと思いますが、子どもを預かる先生方にとっては冷や汗ものでしょう。

一方で、教育実習を終えて、すっかり教師への熱を失ってしまう人も少なくありません。特に多いのが「子どもは可愛いけど、先生方との人間関係が・・・」というパターンです。実際、何人かの実習生から、そんな話を聞きました。学校には「戦場」のような慌ただしさがありますから、お客様気分で来た人の中には、ぞんざいな扱いに不愉快だと感じる人がいるのかもしれません。

問題の根源は、実習生の理解不足にあります。学校が、そういう場であることを肌で感じ取れれば、トラブルは減り、実習もスムーズに進むことでしょう。でも、日ごろほとんど学校と縁のない大学生が、学校の「職場事情」や「文化」を理解するのは、難しいものです。

座学を中心にカリキュラムを消化し、実践は「ぶっつけ本番」の教育実習のみ、しかも2~4週間という短期間という現状の教員採用システムは、無理があるのではないか…。最近、そんなことを思います。

とはいえ、教育実習の期間をこれ以上長くするのは、学校の負担が大きく、現実的ではないでしょう。ならば、例えば教育実習とは異なる、もう少し緩やかな形(ボランティアや指導員など)で学校と携わる期間を設け、ある程度のレベルまで学校の事情や文化を理解した後に、本実習で授業を持つという仕組みは、作れないものでしょうか。

学校の負担を軽減する意味でも、未来の有望な教師を確保する上でも、教育実習のあり方を変えていく必要があるのではないかと、私は考えています。