本づくりをする時に、今でもよく悩むのが「漢字」と「平仮名」をどう使い分けるかです。書籍や冊子、Webなどの場合、最終的に「問い合わせ」「問い合せ」「問合せ」などの表記が混在しないように、「表記統一」をしてやる必要があります。

とはいえ、「表記統一」の基準は、出版社やメーカーによってバラバラです。例えば、省庁や法律系の出版社などは、「取組」とする所が多いですが、新聞社やメーカーは「取り組み」とする所が多いようです。

また、外来語もメーカーの場合は多くが「コンピュータ」「サーバ」「セキュリティ」と末尾に音引きを付けませんが、新聞社の場合は「コンピューター」「サーバー」などと伸ばす慣習があります。

ところで、今日参加してきたセミナーで、一つ面白い話が聞けました。学術論文などの場合、接続詞などつなぎの言葉はなるべく平仮名で表記する原則があるのだそうです。

例を挙げれば、「更に」は「さらに」「例えば」「たとえば」「及び」「および」といった具合にです。それはなぜなのでしょうか。

論文の場合、事実を「効率的」に伝えることを目的としています。そのため、文章の中で重要性の高い言葉を漢字にし、接続詞などの重要性の低い言葉を平仮名にすることで、読み手にサインを送っているというのです。

その先生曰く「文章をざっと見て、色の黒い所(印刷密度の高い所。すなわち漢字)だけを追っていけば、斜め読みでも内容が理解できる」とのこと。長年、「分かりやすい日本語」を追求し続けてきた私としても、これは「目からウロコ」の話でした。つくづく、日本語というのは奥が深いものだと思います。