先日、飯田橋の駅の近くを歩いていたら、どこかで見たことのある年配の男性が、植え込みの縁に腰をかけてタバコを吸っていました。

「あれ?この人誰だったっけ・・・?」と最初は分からなかったのですが、しばらくして、近くの立ち食いそば屋のオヤジさんだと、思い出しました。

どことなく冴えない、思いつめたような表情。姿格好も、少々くたびれた感じです。

立ち食いそば屋の経営なんて、たいへんなんだろうな・・・、客単価も安そうだし、競争も厳しそうだし・・・毎日の生活もぎりぎりだったりするんだろうな・・・なんて、自分勝手に、その懐具合や質素な暮らしぶりを想像したりしました。

ところがその翌日、仕事で面会した不動産屋さんから、こんな話を聞きました。

「いや、佐藤さん、駅前の立ち食いそば屋なんて、丸もうけですよ。店は狭くてもいいので地代は安いわ、原価はかからないわ・・・一杯500円のそばが売れれば、450円は利益って感じですね。加えて駅前だから、味がまずくても一見(いちげん)さんだけで十分に成り立つんですよ。」

なるほど、不動産屋の言うことだけあって、なかなか説得力があります。

「だって考えてみてください。駅前の立ち食い蕎麦屋で、つぶれた店を見たことがありますか?

言われてみれば、どこかしら小汚い立ち食い蕎麦屋も、さえないながら潰れた店は少ないないような気がしないでもありません。

「私が駅前に不動産を持っていたら、間違いなく立ち食いそば屋をやりますね。」とのこと。

その話が本当だとすれば、私が見かけたオヤジさんも、くたびれた格好は「仮の姿」に過ぎず、実は私生活ではベンツに乗って、ブランド品で身を固めたりしているんでしょうかね・・・。