私が小学校1年生の頃に通っていた校舎は、戦後まもなく建てられたという超オンボロの校舎で、建物内にトイレもなく、教室の床板のあちこちが割れていました。

1年生は3クラスありましたが、1組と2組が1階、3組だけが2階にあったと記憶しています。私は3組でしたが、仲のいい友達が1組、2組にもいたので、よく1階に遊びに行っていました。

でも、決して1・2組の教室には立ち入りませんでした。今から考えると不思議ですが、「他のクラスの教室に踏み入れてはならない」が、子ども同士の不文律になっていたように思います。(少なくとも、小学校低学年までは)

そういえば、こんなことがありました。ある日の休み時間、私のクラスのA君が、他クラスのB君と廊下でトラブルになり、逃げるようにうちの教室へと戻ってきました。

しかし、怒ったB君は気にすることなく、私たちの教室へと入ってきたのです。

うちのクラスの児童は、一斉に「入ってくんなよ!」「誰の教室だと思ってんだよ!」と、野次を飛ばしました。そしてしばらく後、分が悪いと見たB君は、バツの悪そうな顔で教室を出ていきました。

その当時、先生は、別に「他のクラスには入っちゃダメ」とは教えていなかったと記憶しています。第一、休み時間に他クラスに入ることがダメな理由が見つかりません。

こんな不文律が今の学校にもあるのかどうか分かりませんが、少なくともあの当時、「他のクラスに入っちゃダメ」は、子どもたち同士の暗黙のルールとして存在していました。

その不文律は、集団への強い帰属意識に由来するものかもしれませんし、縄張り意識に近い人の本能に由来するものかもしれません。