夜型人間には夜型遺伝子が、ゲイにはゲイ遺伝子が、低身長には低身長遺伝子が、精神疾患には精神疾患遺伝子がある……って言われる時代になるのかな。
地方に住んでいて車の運転も下手なのに、そうなると運転不向き遺伝子とか。運動ができないとか、近視で乱視なのも、そう説明されるのかな。
だとしたら、どうして全て生存上不利なのに、自分は今生きているの？っていう根本的な問いが出ると思う。
人付き合いも苦手で内向的だし、極端に人より得意だと思える何かもないし。
よく生物の進化の過程の多様性とか説明されるけど。
多様性って聞こえはいいけど、不利な特質だけを自分みたいな特定の個人が引き受けているってどういうこと？
人類っていう種の多様性のために？はずれくじを引いた個体ってこと？安全な時代に、昔の名残とか言われて説明されるけど。
もしかしたら、生活保護とか障害年金とか、閉鎖病院とか精神薬とか、そういうキーワードと関わりがある方って、こういう話と無縁でないと思う。
自分がそうだから。
社会の中で役に立たないような不利な性質しかないのに、なんで生きているのかって自然な問いだと思う。
どれだけ矯正しても、いつの時代もそういう役割の人ってなぜかいる。
福祉サービス受給者のバッシングは跡を絶たないし、自分も受けてきたけど。不利な要素だらけで生きていけない人が、なぜか一定程度存在している理由って、それが何なのかは分からない。社会にも生物学にも回答はない。
ただ思うのは、能力的な人だけの世界だったら、常に鎬を削って戦争になって、って感じだと思う。
こういう自分みたいな人って、福祉の対象で、そこに少しだけではあるだろうけど、余力が当てられるじゃない？
戦争にならないような弁のような役割なのかなとか思うこともある。人間って常に戦う生き物だから、こういう自分みたいな役に立たない人がいないと戦いが休まらないと思うけど。
役に立たない人を世話する余力とかが、弁みたいな感じじゃないの。人類って生物として、そういう設計なのかな。分からないけど。
強い人と役に立つ人さえいれば一番合理的なこの世界に、なんで自分みたいな人が存在するのかって、科学で解ける話でもないと思う。遺伝子の並びとか、多様性とかではなくて。なんで根本的にそうなの？って。
自分みたいな人は、強い人と役に立つ人に奉仕するため、とか、そういう人をなんとか努力して生み出すため、とか言われそうだけど。でも回り回って、なんでそんなくどい生物のシステムなの？ってなるでしょう。
強くて役に立つだけのプログラムの個体が最初から揃っていれば十分なのにさ。
自分みたいな必要ともされない人の存在価値とか意義って、当然考えると思う。
福祉の費用って、役に立たない人に支払われる無駄金みたいに思われているけれど、世の中がそもそも必要としていないのに、自分みたいな人を世の中でどう見えない所に行ってもらうかってことだと思う。
いわゆる健常者との棲み分け費用ってこと。こういう費用無くしたら、更に健常者の重荷になって、更に自分の存在価値が分からなくなると思う。
ノーマライゼーションなんて言うけど、棲み分けられているから、比較もあまりせずにやって来れているというのはあるし。そういう棲み分けがバッシングからある程度守られるシェルターの役割って感じ。
福祉がなくなって、棲み分けがなくなったら、その時はとうとう健常者の不満の捌け口になって更に要らない存在になると思う。今でもそうだと思うけど。
生きていて不利な自分みたいな人って、一体なんで存在しているのかって、誰も分からないし、永久に解けない謎だと思う。
人類の生存には多様性が不可欠でとも言うけど、強い人だけいざという時は生き残るし(いざという時でなくても)、多様性が過去の名残だとしてもわざわざ残っている意味がそもそもない。普段から競争とかって多かれ少なかれ日常茶飯事で当たり前でしょう？
結局、こういう個人差って何で存在するのかって分からないと思う。何の役割も担わない、役に立たないし貢献もしないっていう役割の意味って何なのだろう？
今の時代って特に、強くなければいけないとか、自分のことは自分で何でもできなくてはいけないとか、自分のことは自分で守るみたいな考えが強いでしょ。別に間違っているとか合っているとか、ここで言いたいのはそういう話じゃなくて。
こういう考えが浸透しているなら、強い人、きちんと鍛錬された人ばかりで溢れているかと思ったら、精神科の外来行けば、こんな異常な過疎地なのに待合室のベンチは満席。立って順番待つ人まで。
一般レベルで末端までこんなにも強さが必要とされている割に、強い人なんて世の中の底辺に全然いないと思う。
一体なんで？ってなると思う。こんなに強いことや丈夫なことが求められているのに、全然丈夫じゃない人達ばかりで。末端が強くないといけないのに、世の中の末端が弱い人達だけで溢れているって。
弱い遺伝子と言いたくないけど、自分では自分をそう思わざるを得ないし。