消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No7- | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No7-

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No7-を取り扱います。

環境心理学の古典的なモデルであるMehrabian Russellのモデル (1974) No4です。このモデルは未だに消費者の店舗でのショッピングの分析に最もよく使われているモデルです。

今回は、Mehrabian Russellのモデルの消費者行動への応用です。以前、店舗の雰囲気No1としてDonovanRossiterの研究を取り上げたのですが、今回の内容と重複するので差し換えます

1.Mehrabian Russellのモデル 復習

外部刺激(例、店舗雰囲気)がどのように人間の感情に影響を与え、最終的に行動に影響を与えるというモデルです(詳細はこちら )。

Mehrabian Russellの研究自体は一般的な状況に関する研究で小売業を対象にしたものではありません。

具体的には以下のようになります。

(1)外部刺激(2)感情(3)行動



2.Donovan等の研究Donovan, & Rossiter, 1982; Donovan, Rossiter, Marcoolyn, & Nesdale, 1994)

Donovan等の研究はMehrabian Russellのモデルを実際に消費者行動に応用した事例として良く知られています。彼らはMehrabian Russellのリサーチ手法(1974)を多少修正して消費者行動の研究に応用しました。修正部分等にリサーチ手法としてやや問題があると(私を含む)一部の研究者に言われていますが、今回はDonovan等の研究をそのまま紹介します。

3.結果

(1)情報レート(information rates

消費者が知覚した店舗の雰囲気(レイアウト、音楽、色彩、混雑など)は下記のように分類されました(Donovan, & Rossiter, 1982)。

(A)革新さ・目新しさ

(話題の)新商品があるか、陳列方法に目新しさがあるか、驚きのあるような商品があるかなど

同じような商品・陳列方法が長期間続けられている店舗は革新さ・目新しさの程度が低いということ

(B)不規則さ

他社にはないような商品があるか、色彩にコントラストがあるか、陳列にコントラストがあるなど

他社と同じような商品・色彩が同じようなパッケージが並んでいる店舗は不規則さの程度が低いということ

(C)バラエティ

商品、パッケージ、陳列、音楽などにバラエティさがあるか

単調な色彩、音楽、陳列などの店舗はバラエティさの程度が低いということ

(C)混雑さ

店舗・通路・階段などのスペースは充分か

店舗・通路・階段などのスペースが狭く、顧客通しの体が触れ合うような店舗は混雑さの程度が高いということ

(D)大きさ

店舗・陳列スペースなどは充分広いか

店舗・陳列スペースなどが狭く迫力のない店舗は大きさの程度が低いということ

(2)情報レート(information rates)と感情の関係(以前のご紹介内容はこちら

(A)革新さ・目新しさ、(C)混雑さ、(D)大きさが覚醒の程度と正の関係がありました。

つまり、多くの目新しい商品がある店舗、混雑している店舗、大きな店舗に入ると消費者はドキドキと鼓動が高まるということが分かりました。なお、衝動買いをする消費者は覚醒の程度が高い傾向にあると言われます。

(3)感情と行動の関係(以前のご紹介内容はこちら

(A)快(pleasure/不快(displeasure

快・不快の程度(快感に感じる程度)は以下の行動に影響を与えました。つまり快の程度が高いほど下記の項目をより強く感じました。

その店舗で買物を楽しんだか、また来るか

店舗滞在時間

顧客に対してフレンドリーな店舗と感じたか

その店舗を好きか

(B)覚醒(arousal/昏睡(nonarousal

全体として、覚醒・昏睡の程度(興奮している程度)は消費者の行動に影響を与えませんでした。

しかし、DonovanRossiterの研究(1982)では快適に消費者が感じている環境下では覚醒・昏睡の程度が消費者の下記の行動に影響を与えることが分かりました。(不快な環境下では影響はなし)

その店舗で買物を楽しんだか、また来るか

店舗滞在時間

一方、Donovan, Rossiter, Marcoolyn, Nesdaleの研究(1994)では不快に消費者が感じている環境下で覚醒・昏睡の程度が消費者の下記の行動に影響を与えることが分かりました。(快適な環境下では影響はなし)

非計画的(衝動的)な購買

上記の違いは研究の対象とした店舗形態の違いとDonovan等(1994)は述べています。前者は様々な複数の業態が対象で、後者はディスカウントデパートが対象。

4.実務への応用

上記のリサーチからも分かるように店舗の売場の変更は消費者の売場の知覚・感情・行動に影響を与えます。当然、実務家の方々はこのような関係は実務経験上分かっていることです。実務上の本当の問題はそれぞれの関係を定量的に測定できないということだと思います。

定量的に測定できる場合は、成績優良店(群)と成績不良店(群)の比較や売場変更前と後の比較、食品と雑貨など売場ごとの比較など様々な応用が可能になります。当然ですが、店舗のフォーマットや立地によって来客の特徴は異なるので、それぞれの店舗の売場はそれぞれの主要来客に合った形のものでなければなりません。このような主要来客に合った売場作りも消費者の売場の知覚・感情を定量化することで可能になるのではないでしょうか?

定量化するには上記の説明で取り扱った学者等が用いたような50から100項目程度にのぼる質問表とそのデータに対する統計分析が必要になります。

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コンサルタント時代の同志とGoot Advice(こちらというサイトでマーケティングに関する無料相談を承っています。

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主な参考論文

Donovan,R.J., & Rossiter,J.R. (1982). Store atmosphere: An environmental psychology approach. Journal of Retailing, 58, 34-57.

Donovan,R.J., Rossiter,J.R., Marcoolyn,G., & Nesdale,A. (1994). Store atmosphere and purchasing behavior, Journal of Retailing, 70, 283-294.

Mehrabian.A., & Russell,J.A. (1974). An approach to environmental psychology, Cambridge, MIT press.