かなり以前の話になるが、ある大企業の専務に呼び出され、個別に赤ペンが入れられた戦略書を挟んで向かい合ったことがある。
その専務は「コンセプトは完全に納得できる。ただ、個別のことで、こう書き直してくれ」と言われた。
手短に言えば、うまくいかないというビジネスをうまくいくように書き直せというものであった。後ほど知ったのであるが、その専務はライバルの役員を外部の子会社に追い出そうとしたのであった。
その時は、そんな裏のことは分からないし、私の戦略書の構造上、先方の赤ペンを全て覆してしまったのである。
なぜなら、私の報告書は、論理的にできているので、先頭のコンセプトを認めたら、その下に論理的に展開されている個別の戦略をひっくり返すことは論理的には無理な構造になっている。
そのため、その専務からすれば、年下の私に、完全に論理的に、丁寧で攻撃的では決してはないのだが、すべて反論されて押さえ込まれてしまったのである。
それから1週間後、その専務から怒りのメールが来届いた。「戦略コンサルタントというのは、依頼者の(お金を払った人)に満足させる仕事ではないのか」という長々しい、かつ子供っぽいメールであった。
結果、弊社の社長と訪問し、こちらの主張は変えないで納得してもらうことになった。
その時私が思ったことは、「戦略コンサルタントは、依頼者の満足を目指すのではなく、その会社にとってもっとも正しい道筋を示すことである」ということである。
その専務が我々戦略コンサルタントに支払ったお金は、彼のお金ではない、その会社のお金であるということである。
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