郁篇
とても落ち着いた顔で体をウォーミングアップしてから雨合羽をかけて走り出す前のスタートを構えたが、まだ足を前に踏み出さないところにあまり遠くないところから傘を支える小さな姿はゆっくり近づいてきた。
そしてぼっとしていてその姿が近づいて来るのを見ている。水浅葱色の傘がその人の顔を遮ったが、伸ばした手で傘の縁を少し上に上げたら、金緑色の髪だった。もっと上に上げると、自分がよく知った瞳であった。
「迎えに来たから。」とパートナーは小さな声で言ったが、顔を膨らませた彼は水浅葱色の傘を郁に渡した。郁に傘を支えさせるということだ。
「いいよ。」と郁が傘を取って暖かく笑いながら言った。手を伸ばして、彼の頭を撫でた。「風邪を引いちゃダメよ。」と自分の雨合羽のボタンを外して彼を腕の中に包み込んだ。そして傘を開いて彼が雨に濡れないようにとても大事そうにながら一緒に家の方へ向かっていく。
[郁:その日に帰ったあとで涙が風邪をひかないのは本当によかった。涙がわざと傘を持ってきて本当にありがとう。]
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