世界はいまだ戦争の惨禍にあえいでいる。アメリカと国連によるアフガニスタン復興の失敗と今度の米兵撤退によりアフガン政府はタリバンに政権を奪取される危機を迎えている。アメリカの中東政策の失敗はイスラム原理主義のテロリズムが世界各国で蔓延することを招いた。ウクライナ問題はいまだ政治的解決を迎えておらず、ウクライナ東部は親露派に制圧されたままであり、再び戦争が起きる可能性を十分に残している。去年のナゴルノ・カラバフ戦争は記憶に新しい。アフリカを見ると、いまだに武装勢力による拉致事件が多発し、去年マリでは軍事クーデターがあった。アフリカにはいまだ政情不安定な国が多くあり、民主主義的な選挙制度のある国でさえも平和的な政権移譲が困難を極める国が多い。

 

 それ以上に大きな戦争の危機を迎えているのは米中間であろう。たとえ直接的な戦いにならずとも、東アジアで両陣営がぶつかり合う可能性が高まっている。米軍司令官がアメリカ議会で中国が6年以内に台湾に侵攻する可能性があると言った。習近平氏の国家主席の任期を考慮して逆算的に割り出された数字であると推察される。これに関しては私の手元に情報が少なく、米太平洋軍の予算の問題ともかかわっているのかもしれないが、中国が米軍の介入があっても台湾を制圧するための準備をしていることは確かであるし、米軍も中国の侵攻を念頭に置いて台湾防衛の準備を進めているだろう。

 

 また、北朝鮮問題も、一次は朝鮮戦争の終戦が宣言される可能性が取り沙汰されるほどに平和への機運が高まったものの、可視化された核放棄プロセスがなければ経済協力が得られないことに対する北朝鮮の反発もあって、米朝間の対立が激しかった数年前の状況程ではないものの少々後退した。朝鮮半島が非核化と平和へ向かっていくかは今後のバイデン政権の動き次第であろう。

 

 日本に住む我々は東アジアの戦争の危機に運命を大きく左右される。米軍がかかわる以上、日本は必ず米軍の後方支援として参戦することになる。この事実は今の日本であまりに軽視されているのではないだろうか。たとえこれらの戦争に自衛隊が直接参戦せずとも、日本は米軍の前線基地となり、特に米軍基地とその周辺に住む住民は常にミサイル着弾の危険にさらされる(しかしそれを行えば日本政府はそれを自国への攻撃と受け止め確実に戦争に参戦することになることが予想されるため、実際に行われるかどうかは定かでない。とはいえ日本への攻撃は相手国の選択肢の一つに必ず入っていることを我々は重く受け止めなければならない)。

 

 さらに、米軍や自陣営の軍事物資等の輸送には日本の交通網が使われる。また、戦争難民を受け入れれば、たとえ人道主義にもとづく支援であろうとも難民の住んでいた国に敵対する国からの反発を受けるだろう。ましてや戦争が長引けば、かつての朝鮮戦争と同じく、台湾や韓国の若者を自衛隊の基地で自衛官が訓練するというグレーな形で日本が戦争に関わることにもなりかねない。また、例えば中国が台湾の物資を遮断するために南シナ海のシーレーンを寸断した場合、当然日本国内にも南アジア経由での貿易船が入ってこられなくなるわけだが、流通網を保護するために自衛隊が南シナ海で中国軍と対峙せねばならなくなる可能性もある。

 

 コロナウイルスが蔓延し始めた初期は各国の軍は感染収束するまで大規模な軍事行動をとれないと言われてきたが、各国のワクチン接種が進み、状況は一年前と変わってきた。感染封じ込めに成功した中国はますます自信を強め、それは特に人権問題を他国から指摘されたときの反発の大きさという形で如実に表れている。アメリカはトランプ氏が退陣し、単独で中国に向き合う戦略から同盟国との連携を重視した形へと大きく戦略を変更した。

 

 中国とアメリカに囲まれた日本は、その地理的条件も相まって、歴史上で最も大きな戦争を起こしうる米中の対立に必然的に向き合わなければならない。そして、我々は必ず東アジアでの戦争を防がなければならない。これを最優先として行動するべきである。