少し痴呆の気が出たのだろうか、母が同じことを繰り返して言うようになった。
娘を連れて実家に帰ったときのことだ。
喜んだ母は、早速娘に「小遣いを・・・」と財布を取り出す。
「いいよ、いいよ・・・」と遠慮しながら娘は、うれしそうな顔を隠しもせず、
何度かのやり取りの末「おばあちゃん、ありがとう」となる。
その後3~4回だろうか、「小遣いを・・・」と財布を出しては、
「おばあちゃん、さっきもらったよ」と繰り返すことになる。
床について、しばらくした時だった。
突然、母が部屋に来て言う、「こんな若い子連れ込んでどうしたんだ・・・」
えっ~、「娘だよ、娘!」
「何言ってんの、大人をからかうもんじゃない・・・」
「いやっ、あのっ、娘だよ、娘!」
娘も「おばあちゃん私だよ、私」と、加勢するが母は聞く耳を持たない・・・
ようやく、納得・・・いや、あきらめた母は、部屋に戻るが、
また、来て繰り返す。
次の朝には、また、母と息子と孫娘になるから不思議だ。
そんなやり取りをした部屋には、
穏やか笑顔をした母の遺影がある。