あの日---もういつの日だったか忘れてしまったが、突如として世界が夜に変わってしまったのだ。音も光も香りも味も、すべてが眠る夜に。
そんな退屈な世界で、唯一、現れたのがあの子だった。
はじめは、何が起こったのか理解できなかった。
いつもと代わらず立ち尽くしていた私の前を、あの子は横切った。
待って、と声を上げるも、間に合わない。手を伸ばした。すり抜けた。一枚布差で届かない。
振り返ったあの子の眼窩は、光にも似た目隠しで飾られていた。
私にはわかった。あの子は私が作り出した幻影。私のためではない、誰かのための私。
私のためには居てくれないのを、私は知っている。
腕が重い。見れば、利き手に暴力装置としての火器がぶら下がっている。
嗚呼、私のためのあの子が欲しい。
捻じ暮れた地平線の端と端に突っ立って、あの子に向けた銃口は、私の額を貫いた。
聖性で綴じた正論で、精製された生を閉じる。
清々した。
次の私はうまくやるだろうか。次のあの子はうまくやるだろうか。
明日もまた、夕暮れも夜明けもないこの夜で、墨を流したような後ろ髪だけが視界を横切るだろう。
せいぜい、うまくやるといい。
夜明け前は、夜より暗いのだから。
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