ホテルに入ってまずは立ったまま抱きしめ合ってみた。お互い初めましての照れくささを隠さずにはにかんだ表情で。

 

 

ここでもしゅう君は

「身長差大丈夫!?」

と気にして聞いてくる。

 

 

「大丈夫だよ!しゅう君身体しっかりしてるからもっと大きく感じるね。」



しゅう君は太っている訳ではないけれど、運動してた人ならではの骨格で厚みがある。厚切りのローストにしたら美味しそうな身体。ハンニバル嗜好は全くないけどそんな風に思った。

 

 

まずは私がさっとシャワーをし、バスローブを羽織ってベッドの上へ。彼が下着も脱がせたい人なのか分からなかったからとりあえず下着も再装着しておいた。

部屋は薄暗く、しゅう君がいつの間にか調整していたようだ。

 

 

しゅう君もシャワーを終えベッドに上り、私と向かい合って座る。彼の顔が近づいてきて私は目を閉じた。

 

 

ゆっくりと時間をかけて唇を重ねていると息をするのを忘れるせいか、酸素が足りずにぼーっとしてくる。ぼんやりした意識でしゅう君の大きな手が頭を優しくなでる感触を心地よく感じた。

 

 

「…かわいっ」

 

 

ぼそっと声が聞こえて薄目を開けると、そこにはさっきの人懐っこい犬のような彼はいなくて、目の奥に灰色の炎を湛え、意地悪が成功して喜んでいるような、左口角だけを上げて微笑んでいる男性がいた。

 

 

服を脱がせるのも、触るのも、舐めるのも、手首を押さえつけるのも、手つきは全部優しかったし、



「都さん、可愛い」という節々で掛かる言葉も、プレイとして言ってることは分かっても、ちゃんと可愛いと思ってくれていると信じさせてくれるような言い方だったけど、

 

 

正常位で挿入されて下から見上げた彼の顔は、さっきと同じくニヒルな微笑を浮かべていた。



サディスティックな笑顔で見降ろされ観察され、私の心はくすぐられた。

 

 

堪らなくなって彼に腕を伸ばし、身体を起こしてもらう。対面座位になり舌を絡ませ合った。そのまま私は快感を貪る。身体を悦びが貫き、私は仰け反ってうめいた。

 

 

「口、離しちゃダメでしょ」

 

 

《それが君のためだよ》と自信をもって諭すように優しく冷静な声で囁かれた。

 

 

その声音と言葉に、私の下腹部は喜んで自身をぎゅっと抱き締めるように収縮した。



「ごめんなさぃ…!」



謝りながら彼の口を吸いに戻る。戻るとすぐにまた激しく下から突き上げられた。私はまた「あぁ!」と歓喜の声を上げる。



「ほら、また離して。ダメだよ」

彼は愉しそうな空気をまといながらまた私を嗜める。



「あ、だって。。ごめんなさ…」

私のために愉快犯になってくれた彼に謝る。



『Mはごめんなさいって言いたいの!ごめんなさ〜い♡』昔行ったSMバーで、お姉様に鞭でお尻を打たれて喜んでいたM女の言葉を思い出した。



あの時は共感出来なかったけど今なら分かる。

全然怒られてなんてなくて、それをほくそ笑んでくれる人に抱かれながら謝りたいと思った。「御免なさい」という言葉は、自分の中の何かを許して貰って解放する『デトックス呪文』そんな気がした。

 

 









コトが終わる。



最後に彼に抱きつこうとしたら、しゅう君が「ちょっと待って!」と言う。何だろう。



「俺すごい代謝良くて今汗だくだから、、抱きしめたいけど、都さんが濡れちゃうし気持ち悪いと思うっ💦」



最初に挨拶した時のような可愛い気にしぃの犬系男子が再びそこにいて、私はくすっと笑ってしまった。



「大丈夫!」



私はそう言いながら勢いよく飛びかかった。彼の汗にまみれても嫌だとは思わなかった。












出会い編は終わりです花