死ぬということは、生きるということ。
この本を皆様にご紹介したいと思い、
これまで散々紹介文を考えてきたのですが、
結局直接の引用が一番しっくりくるので、冒頭に少し載せたいと思います。
著者のエリザベス・キューブラー・ロスは、
長年終末期患者のインタビューを続け、やがてターミナルケアの第一人者となった医師です。
『死ぬ瞬間 ON DEATH AND DYING』も有名です。
---引用開始
人生のレッスンを学ぶことについて語るとき、わたしたちはじつは、まだ完結していない気がかりな問題の解決について語っている。完結していない気がかりな問題とは死にかんする問題ではなく、生にかんする問題である。(略)完結していない気がかりな問題は人生最大の問題だから、死に直面したときにこそ緊急の課題となる。ほとんどの人は完結していない気がかりな問題の大部分を未解決のままにしておわる。問題の一部しか解決できない人も少なくない。人生には学ぶべきレッスンがあまりにも多く、一度きりの人生ではとても習得しきることはできない。しかし、学べば学ぶほど未完結の問題が少なくなり、そのぶんだけ充実した人生となって、ほんとうに生きることができるようになる。(略)
死に直面している人たちはいつも、大いなるレッスンをもたらす教師だった。なぜならば、生がもっともはっきりみえるのは、死の淵に追いやられたそのときだからだ。
---引用終わり
本の中では15のライフレッスンを取り上げています。
第一章 「ほんものの自己」のレッスン
第二章 愛のレッスン
第三章 人間関係のレッスン
第四章 喪失のレッスン
第五章 力のレッスン
第六章 罪悪感のレッスン
第七章 時間のレッスン
第八章 恐れのレッスン
第九章 怒りのレッスン
第十章 遊びのレッスン
第十一章 忍耐のレッスン
第十二章 明け渡しのレッスン
第十三章 許しのレッスン
第十四章 幸福のレッスン
最終レッスン
インタビューの内容などを基にレッスンが構成されています。
どのページも、「生きる」がその人の言葉で語られています。
本当にこれが同じ生きている人の言葉なのかと思うほど、含蓄があるのです。
できるだけ死を遠ざけようとする現代。
死に刮目したこの本が、皆様の「生」を助けますように。
最後にまた引用して終わります、第二章愛のレッスンから。
引用開始---
「あれから家に帰る道すがら、一八歳になる息子のことばかりかんがえていました。それまでは毎晩、わたしが仕事から帰ると、息子はガールフレンドのひとりからもらったという、よれよれのTシャツを着て、キッチンカウンターにすわっていました。ご近所のかたにみられたらどうしようと、はらはらしていましたわ。だって、親の躾がわるいっておもわれますでしょ?」
「息子はお仲間といっしょに、いつもそこにすわっていました」と話を先にすすめた女性は、「お仲間」というとき、あからさまに嫌悪の表情を浮かべた。
「毎晩、わたしは息子を叱っていました。Tシャツのことからはじまって、つぎからつぎへと不満がわきあがってきて・・・まあ、それが息子とわたしの関係でした。
ワークショップで、臨終のエクササイズをやりましたよね。あのときわたしは、人生が贈り物だったということに気がついたのですが、同時に、自分にはそれがあたえられていないとも感じていました。そばにいる人を、どうしても愛することができないという問題も感じていました。そこで、本気になって『もしあした死ぬとしたら』のワークをしてみたんです。もし自分があした死ぬとしたら、自分の人生をどう感じるだろうか?息子との関係が満点ではないにしても、自分のことはだいじょうぶだという気がしました。つぎに、もし息子があした死ぬとしたら、とかんがえました。 自分があたえた息子のいのちにたいして、そのときどう感じるかってかんがえたんです。
息子との関係について、恐ろしいほどの喪失感と深刻な葛藤を感じるにちがいないという気がしました。こころのなかで恐ろしいシナリオがくりひろげられ、息子の葬儀の場面が浮かびました。息子をスーツ姿にして埋葬したくないという気もちが生まれました。スーツを着るような子じゃないんです。好きだったよれよれのTシャツのまま埋葬してやりたいとおもいました。そうすることで、息子とかれの人生をまっとうさせてやりたかったんです。
そこで気づきました。死んだ息子にたいしてはあるがままのかれと、かれが好きだ ったものを愛することができるのに、生きている息子にはそれができないということに。
とつぜん、息子にとってTシャツには大きな意味があるのだということがわかりました。理由はともかくとして、息子はTシャツが好きなんです。ワークショップからもどった日の夜、わたしは息子に好きなTシャツを着てもいいといいました。そのままのあなたを愛している、ともいいました。期待を手放し、息子を矯正しようとすることをやめて、いまのままの息子を愛するのは、とても気分のいいことでした。いまでは、息子を完璧な人間にしてやろうというような気もちはまったくありません。ありのままの息子がとても愛らしいということがわかったからです」
---引用終わり
「ライフ・レッスン」(エリザベス・キューブラー・ロス、デーヴィッド・ケスラー著、上野圭一訳、角川文庫)
