居間の堀こたつに座っているとき、
天井から、ボタッ、と何かが落ちてきた。
天の声か? ネズミか?
と思った。
仏壇の前を見たがプリンセティアがあるだけで何も変化がない。
おかしいな? と思って畳の上を見た。
すると黒い塊が見えた。
大きさは2センチくらいになろうか?
見慣れない物体だなと思い、しげしげと見た。
どうも花のつぼみに見える。
つぼみが天井から落ちてくることはない。
仏間の花瓶を見ると椿の葉が見えた。
そうか椿の枝先からの落花なのだろうが、
開花せずボタッと落ちてはさぞかし悔しいだろう。
76歳になり悔しさのなくなったジージは、
怒り、悔しさ、悲しさ、笑い、寂しさ、と徐々に記憶が薄れていく。
天井でネズミが走り回っていた頃の新婚時代が懐かしく思い出された朝だった。