マリア・パヘス舞踊団公演~セルフポートレイト
かなり前のこと、マリア・パヘス舞踊団公演を観に行った。
場所は東京国際フォーラム ホールC。
フラメンコを観るのは大好き。
フラメンコをあまり知らない人でも、かなり前に話題になった、
「リバーダンス」に出演していたマリア・パヘスといえば、
知っている人も多いだろう。
私はこの「リバーダンス」も、
カルロス・サウラ監督の「フラメンコ」ーこれにも出演ーも
ビデオで観たけれど、舞台は初めてだった。
始まる直前の緊張感ー期待の大きさを物語るように、
息を詰めるがごとく、私は舞台を見つめる。
少し暗めの照明の中、舞台奥にかなり丈の高い鏡がひとつ。
後ろ向きのマリア・パヘス。 衣装も黒、シンプルかつ、
彼女の造形的美しさを際立たせている。
I am what I dance
神聖であると同時に冒涜的ですらあるかもしれないけれど、
外側から称えられるだけではなく、
内から込み上げてくる美の恩恵を分かちあうために、私は踊るのです。
― マリア・パヘス
「私は踊りそのもの」と言う彼女の言葉通り、内なる踊りは
フラメンコの旋律とともに、
素晴らしいほどに、しなやかに、伸びやかに、力強く、激しく・・・そして、
一番、印象的だったのは、他の、
今まで私が観たスペイン人の公演のどれよりも
静寂感が心に染み渡ったこと。
そして、今回、照明の見事な効果も印象的だった。シルエットの美しさ。
鷲の翼を広げたような腕。
セルフポートレイトの題目の通り、
自分の踊りの人生を振り返るというスタイルで舞台は続く。
「スタジオにて」 「私の家で」 「楽屋にて」 「舞台にて」
渾身の踊り!
休憩なしの、ノンストップで舞台は続き、
この事が、内なる想いの高まりをよく表現し、
同時に、見ている側の舞台そのものへの高揚感を助長する。
衣装も華やかさを増して、
最後のアレグリアスで「喜び」のラストへと!
自然と涙が溢れ、
あちこちで起こる、スタンディングオベーション。
拍手の波。
終演後、
しばし、座り込む私。
こんなにも心揺さぶられたのに、いえ、フラメンコが大好きで、
今や私の中心といっていいくらいなのに、
このところ、気持ちがふらふらしていてー前から少し悩みというか、
思うところがあって、
練習にも前ほど、身が入らなくなっていた。
誰かに相談しなくては・・・
普段の生活からも、フラメンコが少し遠のいていた。
その時、厳しくも温かい言葉ー「持っているもの、全て教えるから・・・」
泣きそうになった。
勿論、私にではなく、そのクラスに発せられた、言葉だけれど・・・
たとえ、前に進むのが、1センチずつだったとしても、出来る限り、
その言葉に答えよう。
アティエンポとコントラティエンポのように。
