韓国文化院で
日韓国交正常化50周年記念
1960・70年代日韓名作映画祭開催。
日韓の国交が正常化された1960年代から1970年代は
韓国映画界も日本映画界も
多作・隆盛から衰退へという大きな変化を経験。
全ての作品を観に駆け付ける時間はなかったけれど...
金承金玉 김승옥の短編小説「霧津紀行 무진기행」（1964年）を原作とし
脚色もキム・スンオクが担当。
シン・ソンイル、ユン・ジョンヒ主演
キム・ジョンチョル、イ・ナックン、イ・ビナ共演
キム・スヨン監督『霧 안개』（1967年）について。
（以下、映画の核心に触れる部分もございます）
軍事政権下で経済発展が続く韓国の行方は
海が近いのに港町ではない、漁村でもなく農村でもない
曖昧で中途半端な霧津に、
（朝鮮戦争当時）兵役忌避し
かつて肺病患者でありながら
現在は製薬会社の娘と結婚し
順調に常務理事に上りつめたユン・ギジュン（シン・ソンイル）に近似し、
内なる違和感や
それに起因する倦怠感がアンニュイに描かれる。
ユン・ギジュンは故郷への列車の車窓や沼の水面に
かつての自分が映ると
故郷・霧津で否応なく若き日々がよみがえる
無気力、無意味、俗物...と
内省的で否定的な（自己）評価が重ねられるが
それはギジュンの過去も現在も（恐らく）未来にも続きそうな...
霧の中のような、先の見えなさと地続き。
猛進する時代と経済、国家は
一瞬の躊躇や足踏み、迷いや停滞も吹き飛ばしそうな勢い。
その中での不安や倦怠は個人の感慨というだけでなく
時代の空気、
時代精神 、
当時の韓国の行く末や情勢もうっすら反映されている趣が。
『犯罪との戦争：悪いやつらの全盛時代 범죄와의 전쟁:나쁜놈들 전성시대』 には
ヤクザのような検事や
民間人でもなくヤクザでもない中途半端な
パンダルが登場したが...
韓国の抱える内なる矛盾に通じる思いも。
一方、故郷についても考えさせる。
高度経済成長を迎えて
故郷を地方を離れ都市の日常に埋没する人々に
戦後故郷のない人々、
故郷を自分の中から消す人々も...
韓国二人目の女性監督ホン・ウンウォン の次に世に出た
ファン・ヘミの初企画作品という点も興味深い。
タバコ代わりに仁丹食べてと
タバコの箱には妻からのメッセージ。
夫の体を気遣う健康志向だが、
その背後には恐らく夫の出世と会社内での地位の安定を望む
配偶者としての女性のしたたかさが。
霧津という田舎の学校の音楽教師から
抜け出したいと思うハ・インスク（ユン・ジョンヒ）の都市志向、上昇志向は
かつて同じ霧の町から抜け出たギジュンも同じはずなのに...
都市生活と経済的安定を捉え獲得した人間と
捉えられなかった人間が疎外されるように遠ざかるが
そこに無力感が残るのは
霧津という土地の、地方の呪縛のようにも思え、一種文学的でもある。
故郷を捨てることができた、経済成長の波に乗って上昇したギジュンと
対照的に、まだ抜け出せない人間は疎外されるように地方に残される現実は
その後も続く韓国社会の歪みの前兆でもあるのだが。
男女の別れというメロドラマの背後に
霧津をはさんで
霧津から抜け出した者と
まだ抜け出せずもがいている者の明暗
対比も余韻を残す。メロドラマ以上の重さで。
ファン・ヘミ初監督作品『첫경험』（1970年）も
ユン・ジョンヒ主演。
（シチュエーションは『霧』に少し似ているもよう）
観てみたい。
シン・ソンイルの背中の凹み、
肩甲骨から流れる汗のシーンが印象的（なラブシーン）。
ユン・ジョンヒの最近作は
イ・チャンドン監督『ポエトリー』 。
日韓国交正常化50周年記念
1960・70年代日韓名作映画祭で
ユン・ジョンヒ、ホ・ジャンガン、
サ・ミジャ、イ・スンジェ主演、ユ・ヒョンモク監督『糞禮記 분례기』
テーマ曲「霧」
정훈희안개
BoAによるカバー、안개はカン・ドンウォン主演、イ・ミョンセ監督『M』のエンディングに
to be continued...!?
buzz KOREA
Click...
にほんブログ村 韓国映画
にほんブログ村 映画
にほんブログ村 映画評論・レビュー
にほんブログ村 韓国情報
にほんブログ村 K-POP
にほんブログ村
Copyright 2003-2025 Dalnara， confuoco. All rights reserved.
本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は
著作権法に基づき出典（ブログ名とURL）を明記してください。
無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、
表現や
情報、意見、
解釈、考察、解説
ロジックや発想（アイデア）・
視点（着眼点）、
写真・画像等も
コピー・利用・流用・
盗用することは禁止します。
剽窃厳禁。
悪質なキュレーション Curation 型剽窃、
つまみ食い剽窃もお断り。
複製のみならず、
ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、
リライト、
切り刻んで翻案等も著作権侵害です。